e太陽光発電の普及 電力買い取りの悪用防げ

  • 2013.08.24
  • 情勢/社会

公明新聞:2013年8月24日(土)付

 

再エネ市場育成は適正な制度運用で

 

再生可能エネルギー(再エネ)の普及拡大を促す固定価格買い取り制度(FIT)を開始してから、1年余が経過した。

原子力発電の信頼性が大きく揺らいだ今、今後の電力供給を支える柱になるのが再エネだ。特に、太陽光は全国各地にくまなく降り注ぐため、最も利用価値が高い。かつては発電量が天候に左右される問題も指摘されたが、技術改良が進み安定的に利用できる電力源になった。世界的な太陽光市場の成長が後押しとなり、国内関連産業への経済効果も期待されている。

ただ、FITの運用に関して、一部で懸念される動きが出てきた。経済産業省が公表した再エネ発電設備の導入状況によると、今年5月末までに国が認定した太陽光を中心とした発電設備のうち、約85%(電力ベース)が運転を開始していない。大半は企業だ。個人が設置した太陽光発電は、ほぼ全て稼働している。

背景には、FITを悪用する業者の存在が指摘されている。FITを利用する売電には、国による発電設備の設置認定が必要だ。電力の買い取りは、設置認定を受けた時点の価格が適用される。再エネの普及度に合わせて、買い取り価格を徐々に引き下げていくのが制度の基本原則だ。

このため、買い取りによる利幅が大きい間に、駆け込み的に発電設備の建設許可だけを受ける業者がいるとみられる。獲得した売電の権利を転売して、利益を得る仲介業者までいるという。

全ての電気利用者の協力で再エネ活用を促すFITの趣旨に反するものだ。国民から悪質な行為と非難されても仕方ない。経産省は実態解明に乗り出し、調査結果を公表する方針を示した。

国の工程表では、再エネを軸にした電力市場の確立を2020年ごろと定めている。健全な電力市場が自律的に動き出すまでは、国が定めた適正価格による買い取りは欠かせない。制度の信頼性を担保するためにも、不正が明らかになった業者に対して、国は厳しい態度で臨むべきだ。

実際の設備稼働率が低い一因には、世界的な太陽光パネルの品不足によって、仕方なく運転開始を遅らせているケースもあるだろう。既に再エネの電力事業に参入している企業の多くは、適正利潤を生み出している。地域活性化や雇用の創出にも貢献している事実も忘れてはならない。

再エネ市場を健全に育成し、経済の国際競争力を高めるためには、適正な制度運用が必要である。

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