e進むインフラ老朽化対策

  • 2013.07.19
  • 情勢/社会
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公明新聞:2013年7月19日(金)付

 

公明党は、大規模地震から国民の命を守る「防災・減災ニューディール」を連立政権で強く訴え、着実に前へと進めてきた。現在、2012年度補正予算と13年度予算を合わせた「15カ月予算」で、橋などのインフラ(社会資本)の総点検と老朽化対策が行われている。老朽化が進むインフラを低コスト(経費)で安全に管理するとともに、予算の重点的な投入によって地方の仕事が増えるなど、新たな経済効果も出始めている。

公明主導「防災・安全交付金」が地方を後押し

インフラの老朽化対策が、なかなか進まない要因は、「自治体の財政難と技術者不足」(国土交通省)だ。そこで「15カ月予算」には、自治体への財政支援のための「防災・安全交付金」(合計1兆6000億円)が盛り込まれた。国交省の調べでは、橋の補修関連の予算だけでも民主党政権の時と比べ、大幅に増えている【グラフ参照】。

こうした国の財政支援に後押しされ、全国の自治体ではインフラ老朽化対策への予算を増額する動きが出ている。同省によると、補修実施済みの橋がゼロという市区町村数は、昨年の1392から847へと大幅減少。橋の長寿命化に向けた修繕計画の策定率(市区町村)も約79%と、昨年の約51%から前進している。

こうした流れの中、補修工事などを受注する地方の建設業界も活気づいてきた。岐阜市内の塗装会社に20年間勤めてきた40歳代男性は「特に、自公政権が誕生してから、橋の塗装の仕事が倍増した。業界全体として景気回復に希望を持てるようになった」と語る。さらに「15年前から老朽化対策の必要性を行政側に指摘してきたが『財政難』を理由に進まなかった。インフラの老朽化対策は人命に関わることなので、前進したことはうれしい」と強調する。

一方、技術者のスキルアップ(技能向上)の取り組みも加速化している。岐阜県は08年度から、岐阜大学の社会資本アセットマネジメント技術研究センター(CIAM)と連携。道路工事を発注する側の自治体職員と建設会社など工事を請け負う側の技術者を対象に、インフラの点検から補修計画の策定、設計、施工までを一貫して実施できる高い技術を身に付けた専門家「社会基盤メンテナンスエキスパート」(ME)を養成する講座を開講。同講座を修了し、MEに認定された人は12年度までの5年間で170人に上っている。

県では今年度から、防災・安全交付金を活用し、養成講座の中で行われる県管理のインフラ調査・点検や検証をCIAMに委託している。

命守る投資で地域活性化


補修必要な橋、8割超未着手

国交省は2日、都道府県や市区町村などが管理する長さ15メートル以上の道路橋(道路として使われる橋)14万3763カ所を対象に、点検や補修の状況に関する調査結果を公表した。

それによると、各自治体が補修を必要と判断した橋は6万8800カ所。このうち、補修が済んだのは4月現在、1万42カ所(約15%)にとどまり、残り5万8758カ所(約85%)の補修が着手できていない。

また、老朽化などで通行規制されている橋は1381カ所と、昨年(1379カ所)と比べて増加した。その約半数が築後50年以上経過している。

同省の試算では、国が管理する橋も含め、築後50年以上が経過していたのは11年時点で約1万5000カ所、21年には約4万4000カ所、31年には約8万4000カ所に上る。

同省では「引き続き、自治体が管理する橋の予防保全の促進が必要」との見解を示している。

「予防保全」の維持・管理、各地に拡大

限られた予算の中で、いかにインフラ老朽化対策を実行するか。そのカギを握るのが「予防保全」の視点だ。「悪くなってから直す」という従来型の「事後保全」と比べ、「悪くなる前に小まめに直す」ことで全体的な経費削減につながる。予防保全の取り組みは各地に広がっている。

例えば、青森県は、06年度から全国に先駆けて「橋梁アセットマネジメント」を開始している。全ての橋の劣化状態を点検し、長寿命化への最適な対策などを決め、全体の維持管理費を算出。県の予算と調整しながら計画を策定し、維持管理費を「平準化・最小化」するというもの。県では、12年度から50年間、事後保全型で行った場合と比べ、777億円のコスト縮減効果があると試算している。

外部委託によって、維持管理予算を軽減する工夫も重要だ。千葉県我孫子市では、本庁舎の維持・管理業務を一括して1社に委託したことで約864万円の経費削減につながった。そこで、12年度からは、市内54の公共施設の保守・点検など維持・管理業務を1社に包括委託している。

今年度からは保育所や障がい者関連施設などを加え、66施設に拡大した。同市施設管理課は「これまで気が付かなかった損傷箇所を指摘してもらえるようになり、目の届かないところまで建物をチェックできるようになった」と語る。

 

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