t2013年7月19日金曜日

造血幹細胞移植推進法-法律の第35条に、移植に適さないさい帯血を研究に用いることができる規定を盛り込みました。これにより、iPS細胞など再生医療の研究などにさい帯血を利用することを法的に担保したことになります。


公明新聞:2012年11月13日(火)付


再生医療研究を法的にも担保


白血病など血液の難病に有効な治療法である造血幹細胞(骨髄、末梢血幹細胞、さい帯血)移植を一体的に推進するための「造血幹細胞移植推進法」が今年9月に全会一致で成立した。この法律が今、iPS細胞(人工多能性幹細胞)など再生医療研究にさい帯血の活用を認めた法律としても注目を集めている。同法成立の意義や課題をまとめた。

患者に"最適な移植"実現へ
骨髄、末梢血幹細胞、さい帯血移植 一体的に推進し、選択を可能に

造血幹細胞は、血液中の赤血球や白血球、血小板をつくり出すもとであり、骨髄のほか、赤ちゃんのへその緒や胎盤の中にあるさい帯血などに含まれる。

現状では骨髄バンクが骨髄、末梢血幹細胞のドナーのあっせんを行い、また、さい帯血バンクがさい帯血の調製等を行っている。しかし、法的な位置付けがないため、バンクの財政運営は不安定なものとなっており、存続すら危ぶまれるさい帯血バンクも出ていた。

このため、造血幹細胞移植推進法では両バンクの財政運営の安定を図るための国による財政支援が盛り込まれた。

造血幹細胞移植の非血縁者間の移植件数は年々増加し、2011年には骨髄移植を延べ約1200人、さい帯血移植を延べ約1100人が受けるまでに増えている。また、今後、高齢化などに伴う移植ニーズの増大に対応するためにも、法整備を急ぐ必要があった。

同法成立の背景には、15年にもわたる公明党の地道な取り組みがあった。公明党は1997年、さい帯血の公的バンク設立を求める署名運動を全国で展開。220万人を突破する署名を集め、98年にさい帯血移植術への保険適用、翌99年には公的バンク設立を実現し、次々と"ウルトラC"の快挙を成し遂げてきた。

法制定は公明党が一貫して主導してきた。昨年5月にさい帯血法整備推進プロジェクトチーム(PT)を設立。昨年12月には骨髄移植なども含めて法制化をめざすことに転換し、党造血幹細胞移植法整備検討PTに改編(渡辺孝男座長)、今年1月には党独自法案を取りまとめた。その後、6月に野党4党で法案を国会に提出した後、9月6日、衆院本会議で全会一致で同法を成立させた。

iPS細胞研究にさい帯血を活用

さい帯血からのiPS細胞ストック(概念図)「一日も早く、さい帯血という宝の山を、iPS細胞という違う形で患者のために使わせてもらいたい」。ノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった京都大学の山中伸弥教授は先月18日、公明党の再生医療推進プロジェクトチームの会合で、こう力説した。

さい帯血は年間1000件を超える移植が行われており、多くの患者の命を救っている。だが、さい帯血は保存から10年以上たつと処分されている。また、細胞の数が少ないものも移植に適さない。山中教授は、この処分されているさい帯血を利用し、iPS細胞の作製をめざしている。

公明党が成立を主導した「造血幹細胞移植推進法」には、さい帯血を研究のために「利用し、又は提供することができる」(第35条)との文言が盛り込まれ、移植に使わないさい帯血を研究のために活用することを法的に認めた。

山中教授は、あらかじめ他人の細胞からiPS細胞を作って、備蓄しておく再生医療用の「iPS細胞ストック」という計画を進めている。

しかし、他人の細胞を移植すると、拒絶反応が起きる可能性がある。そこで、細胞の血液型(白血球の型)といわれるHLA型を揃える必要があるが、HLA型は数万種類以上あり、新たにHLA型を調べて揃えるとなると、膨大な費用が掛かってしまう。

ところが全国に8カ所ある公的バンクに保存されているさい帯血は、このHLA型が調べられており、その中から特別なHLA型のさい帯血を150種類ほど集めれば、日本人の95%に合うiPS細胞ができる可能性があるとして、大きな期待が寄せられている。

万能細胞であるiPS細胞は体のあらゆる組織や臓器の細胞になることができる能力を持つ細胞である。さまざまな細胞への分化が可能で、再生医療や創薬への応用が期待されている。難病患者からiPS細胞を作って解析すれば、発症原因や治療の糸口も見つけられるかもしれないからだ。

山中教授が指摘するように、iPS細胞を活用した再生医療の実現には、まだ時間がかかる見込みだが、患者の治療のために一日も早い実現に向けて研究を進めることが今こそ必要だ。

公明党の長年の取り組み実り、法制定
党造血幹細胞移植法整備検討PT座長代理 山本香苗 参院議員

このたび、公明党の長年の地道な取り組みが実り、造血幹細胞移植推進法を成立させることができました。この間、多大なご尽力をいただきました患者支援ボランティアの皆さま、医療関係者の皆さまに心より厚く御礼申し上げます。

造血幹細胞移植は、現在、年間約3000件行われておりますが、潜在的な需要は約5000件ともいわれており、移植を希望する全ての患者ニーズに応えられていません。

そこで、移植を希望する全ての患者の方々が公平で安心して移植が受けられる体制を整備するとともに、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、さい帯血移植の三つの移植術のうち、病気の種類や病状にあった最適の治療法を選択できるようにすることを法律の目的としました。

法律では、公的バンクを許可制とし、営利目的や一定の品質が保てない事業者を排除する新たな規制を設けるとともに、許可されたバンクには、国による補助の規定を盛り込みました。さらにバンクの事業を日本赤十字社がサポートすることも法律に明記しました。

このほか、造血幹細胞を提供したドナーや移植後の患者の健康状況を把握して分析する取り組みを国が支援することも規定しました。このフォローアップの取り組みにより、移植で命が助かるだけでなく、移植後の生活の質の改善が一層図られることが期待されています。

法律の第35条に、移植に適さないさい帯血を研究に用いることができる規定を盛り込みました。これにより、iPS細胞など再生医療の研究などにさい帯血を利用することを法的に担保したことになります。

一日も早い法律の施行に全力を挙げてまいります。

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