e日米地位協定の課題

  • 2018.08.28
  • 情勢/国際
2018年8月28日


公明党が申し入れた提言とその背景 
米軍基地への日本の立ち入り権必要


沖縄県では米軍機の事故が続き、警察が事故現場に入れないなど、改めて日米地位協定のあり方を問う声が上がっている。公明党は3月、遠山清彦衆院議員を座長とする日米地位協定検討ワーキングチーム(WT)を設置して調査・研究を進め、米軍基地への「立ち入り権」明記などの提言をまとめ、8月3日に政府に申し入れた。WTでの議論を通し、日米地位協定の課題を解説する。
依然続く事件・事故 運用改善では限界も

軍隊が外国に駐留する場合、軍隊の派遣国と駐留を受け入れる国との間でさまざまな取り決めが行われる。米軍の日本駐留に関する取り決めが日米地位協定である。
1960年に発効した日米地位協定は、在日米軍による施設・区域(いわゆる米軍基地)の使用を認めた日米安全保障条約第6条を受けて結ばれた条約であり、米軍基地の使用のあり方や日本における米軍の地位を定めている。
この中で、公務執行中の米兵の犯罪は、米側に第1次裁判権があることや、米軍基地の運営などに必要な管理権が米軍に認められている。
これに対し、「日本に不利な協定」との批判も根強い。
特に、米軍人や軍属(米軍に雇用されている軍人以外の米国人)による犯罪や軍用機の事故が繰り返される沖縄県では、犯罪捜査や事故調査で日本側が主体的に行動するには日米地位協定の改定が必要との声が多い。
しかし、改定は実現せず、運用改善が進められた。
例えば、日本が第1次裁判権を持つ犯罪でも容疑者である米兵の身柄が米側にある場合、日本への身柄引き渡しは起訴後と定めてあるが、殺人や強制性交等罪(旧・強姦罪)など重大犯罪では、起訴前の身柄引き渡しについて好意的考慮を払うことが23年前に決まった。これまで起訴前の身柄引き渡しは5件実現したものの、米軍頼みであり、限界があるとの意見もある。

改定求める沖縄 海外調査し問題提起

日米地位協定に関する課題と日常的に向き合っているのが、全国の米軍専用施設面積の約70.6%が集中し、米軍人による事件や米軍機の事故が続く沖縄県である。沖縄県は、これまでも日米地位協定の改定を訴えてきたが、今年、米国と地位協定を結ぶドイツとイタリアで現地調査を実施し、改定について問題提起をした。
公明党のWTは6月、沖縄県から調査結果を聞いた。
その中で、ドイツでは地位協定改定が、イタリアでは新協定の締結が実現した事実が報告された。それらが実現した背景として同県は「両国とも大事故の発生で世論が高まった」と述べ、日本でも国民的な関心が重要と訴えた。同県はまた、両国とも米軍基地への立ち入りが可能なことを示し「日本は米軍に排他的管理権を認め、立ち入りが自由にできない」と指摘し、「一番の問題だ」と訴えた。
WTはこのほかに外務省や国会図書館の専門家、また、党沖縄県本部を始め、米軍基地のある自治体の議員からも情報を得て、日米地位協定改定への課題をまとめた。

公明が申し入れ

WTの検討を踏まえ、公明党は、日米地位協定改定への5項目の提言をまとめ、政府に検討を申し入れた。

【起訴前の身柄引き渡し】 運用改善で実施されている起訴前の身柄引き渡しに関する「好意的考慮」を、地位協定あるいは補足協定などで明記すること。

【基地への立ち入り権】 地位協定に明記のない日本政府・自治体の立ち入り権を適切な手続きの下で原則認め、特に、犯罪捜査・環境調査の場合はスムーズに認められるようにすること。

【訓練演習への関与】 ドイツ、イタリアでは米軍の訓練演習には受け入れ国の許可・承認が必要だが、日本には規制する権限もなく、実施日時・場所が通報されることも少ない。「騒音軽減委員会」を設置し、訓練演習に住民の意見を反映させること。

【事故時の対応】 米軍の事故現場に警察・自治体が立ち入れるようにすること。

【日米合同委員会】 合意内容を原則公開とすること。

あるべき協定の姿めざす
党ワーキングチーム座長 遠山清彦衆院議員

公明党はこれまでも日米地位協定の改定や、沖縄の基地負担軽減などを日米両政府に改善を求めてきた。
その過程で、運用改善だけでなく、日米地位協定の下で初となる補足協定も実現した。米軍基地内外での環境対策を進める2015年締結の「環境補足協定」と、軍属の範囲を定めた17年締結の「軍属に関する補足協定」だ。
しかし、依然として米軍人による事件や米軍機の事故が続く状況を踏まえ、再度、あるべき日米地位協定の姿を議論し、具体的な改定項目をまとめたのが今回の政府への申し入れである。米軍基地への立ち入り権の明記など実現へ努力したい。

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