e【主張】洋上風力発電の普及 日本が開発する浮体式に利点

  • 2018.08.23
  • 情勢/解説
2018年8月23日


海上に設置した風車が、強い風を受けて電力を生み出す洋上風力発電。国土面積こそ狭いが、四方を広大な海で囲まれている日本は、洋上風力発電の適地に恵まれている。
政府は、7月に閣議決定した第5次エネルギー基本計画で、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを「主力電源化する」との方針を初めて示し、重点的に導入を推進する対象の一つとして、洋上風力発電を挙げた。
そこで期待したいのは、現在進められている洋上風力発電の技術開発だ。
特に、国立研究開発法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と、日立造船や丸紅などが共同で開発している「台船(バージ)型」の浮体式洋上風力発電に注目したい。今月10日に実証機が公開され、北九州市の港から約15キロ離れた沖に設置し、9月から試運転を始める。
洋上風力発電は、風車を支える基礎を海底に設置する「着床式」と、海に浮かべる「浮体式」に大別される。
洋上風力発電の導入で先行する欧州諸国で主流なのは、着床式だ。しかし、着床式を建造できるのは水深30メートルまでとされ、遠浅の海が少ない日本では設置が難しい。
一方で、浮体式は釣りのウキに近い形状で、上部が海面から顔を出し、下部が海中に沈む。いかりなどで係留し、流されないようにしている。深い海でも設置可能だが、莫大な建設費用がかかる。
なぜなら、世界的に商用化が進んでいる浮体式は、高さ全長200メートル近い巨大な建造物だからだ。20階建て超高層ビル(約60メートル)の3倍になる。設置には100メートル以上の水深が必要だ。
このため、日本で洋上風力発電を普及するには、浮体式の小型化が欠かせない。
NEDOなどが公開したバージ型の浮体式は全長約80メートル。従来のウキのような形とは異なり、ドーナツ型の小型浮体構造物に風車を設置している。50メートル程度の水深でも設置可能で、日本の近海に適している。風速毎秒51メートルの台風にも耐えられるという。
陸上風力発電の5倍の電力を生み出すとされる洋上風力発電への期待は高い。その技術開発を日本がリードしてほしい。

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