eコラム「北斗七星」

  • 2018.08.16
  • 情勢/社会
2018年8月15日


久しぶりに山崎豊子のベストセラー「不毛地帯」を手に取った。主人公・壹岐正は、11年にわたるシベリア抑留生活を送って日本に戻ってきたという設定だ。北斗子の亡き実父も長くシベリアに抑留されていた経験を持つ◆大好きな酒がすすむと抑留時代の体験を漏らすことがあった。氷点下50度の中での森林伐採という重労働、朝起きてみると隣に寝ていた同僚が冷たくなっていたこともしばしば。そして最後に「よく生きて帰れたものだ」とつぶやいた◆終戦時、旧ソ連が、中国東北部(旧満州)から強制連行した日本兵らは約60万人に達し、そのうちの約6万人が死亡した。今月、厚労省はシベリアで死亡した抑留者10人の身元を新たに特定したと発表。また、モンゴル移送中に亡くなった43人の記録も発見された◆戦後73年を経てなお抑留の実態は不明な点が多い。昨年夏、シベリア抑留犠牲者の追悼の集いに参列した公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は、「実態の解明、遺骨収集に超党派で取り組む」と語った◆抑留者引き揚げの拠点となった舞鶴市(京都)に引揚記念館がある。ここでは、高齢となった抑留者から体験を引き継ぐ"語り部"の育成にも取り組んでいる。戦争体験を風化させてはならないと、30年前に公明市議の提唱で建設された施設だ。(正)

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