eコラム「座標軸」

  • 2018.08.13
  • 情勢/社会
2018年8月12日


1990年夏、英科学専門誌「ネイチャー」に衝撃的な論文が掲載された。英王立がん研究所のグッドフェロー博士らによる性決定遺伝子の発見。いや、正確には「男性化を決める遺伝子」の発見だ◆無論、「男性化」という以上、カスタマイズ(作りかえ)の前の原型、すなわちデフォルト(基本仕様)がある。それは何か。性差不定の混沌状態? それとも両性具有状態? ノーである◆ヒトに限らず、全ての生物はまずメスとして発生する。言うならば、アダムからイブが生まれたのでなく、イブからアダムが生まれたということ。メスこそが生命の基本仕様なのだ。分子生物学者・福岡伸一氏の『できそこないの男たち』で知った◆事実、胎児は皆、受精後約7週目までは女性で、誰もが「割れ目」(女性生殖器の原型)を持つ。男性の陰嚢の裏を縦に走る縫い目のような一本線「蟻の門渡り」がその証拠だ。男性化に際し、性決定遺伝子が割れ目を縫い合わせた痕跡らしい◆そこで、女性差別入試が発覚した東京医科大学の首脳陣へ。出直しはこの本を読むことから始めては? 女性差別は生物学的にも見当違いで、生命そのものへの侮辱であることを思い知るはずだ。何しろ、あなた自身が元女性なのだから。

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