eコラム「北斗七星」

  • 2018.08.06
  • 情勢/社会
2018年8月6日


 夏休みを利用し、広島を初めて訪れたのは高校生の時。平和記念資料館では、当時展示されていた、等身大の人形を使って被爆直後を再現したジオラマに強いショックを受けた。ほんの少し前まで、いつもと変わらぬ生活が続いていたはずの街が一瞬にして地獄のような光景に。「逃げ惑う人たちは、いったい何を思っていたのだろう」と考え続けた◆戦後73年が過ぎ、戦争を知る人は少なくなっている。戦争の悲惨さをどう伝えていくか、重い課題だ◆先頃、読売新聞社と広島大学平和センターが広島、長崎で爆心地近くにいた被爆者100人に実施したアンケートでは、64人が核兵器の脅威が次世代に継承されていないと答えている。被爆者の体験が伝わらなければ、核兵器や戦争と平和という問題も現実感を欠いてしまう◆過去の戦争に限らない。今も世界で多くの人びとが戦乱や貧困、差別などに苦しんでいる。しかし、他人の苦しみを知り、相手の視点に立って物事を捉えようとする思考は失われつつある。自分のこと、自分の国しか考えない偏狭さが横行すれば、平和はますます遠ざかり、差別や分断が広まるばかりだ◆人の痛みを感じる力は不断に磨かねば錆付いてしまう。広島原爆忌のきょう、改めて73年前の出来事に思いをはせ、平和の誓いを新たにしたい。(千)

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