eコラム「北斗七星」

  • 2018.08.02
  • 情勢/社会
2018年8月2日


天下太平の様子を尭風舜雨という。中国古代の伝説上の聖天子、尭と舜の恩徳が国中に行き渡ったことに例えた言葉である。ただ、当時の民は善政の恩恵に浴した一方で、河川の氾濫に苦しんだ◆舜の禅譲を受けて王位に就いた禹は、黄河の下流の流路を変える大規模な治水工事に取りかかる。やがて、洪水の心配は消え、世は五穀豊穣で潤う。儒学の枢要な文献である四書の一つ「孟子」が伝えている◆西日本豪雨の発生から間もなく1カ月になる。平成最悪の水害は200人を超す犠牲者を出した。想像もつかない「まさか」が、どこでも起こりうる。その怖さを一人一人が胸に刻む以外、無念の霊を慰める手だてはなかろう◆被害を避けるため、自らの判断で賢明に行動する。地域が一体となって減災に取り組む。自助と共助の大切さが改めて身に染みた人もいよう。個人レベルにとどまらない。今回のような同時多発的に起きる広域災害は、市町村も同じではないか。例えば、被災地にあふれる災害ごみは、他地域の手を借りねば処理できまい。復旧作業が長引けば、全国の自治体の職員の手を借りるかもしれない◆毎年、違った特徴を持つ豪雨災害が列島を襲う。その猛威は激甚化する一方だ。身を守るには、傑出した為政者の手腕だけに頼る時代ではない。(明)

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