e【主張】自転車保険 事故被害者のためにも加入を

  • 2018.08.01
  • 情勢/解説
2018年8月1日


自転車と歩行者との接触事故が後を絶たない。
警察庁によれば、自転車が関係する事故はこの10年で半減しているが、歩行者との接触事故は1割程度の減少にとどまる。昨年12月には、左手にスマートフォン、右手に飲み物を持って電動アシスト自転車に乗っていた女子大生が、高齢女性に衝突し、死亡させる事故が発生した。
自転車はハンドルやブレーキを両手で操作するのだから「ながら運転」は禁物だ。何より、法律上は軽車両に位置付けられており、歩行者の保護に努め、歩行者の通行を妨げないことが原則である。
にもかかわらず、こうした基本的なルールを無視した自転車の利用者が目につく。警察による取り締まりは当然として、学校や行政機関は安全講習などを通じて利用者の意識啓発に努めるべきである。ひとたび歩行者との衝突事故を起こせば、最悪の場合、被害者の死亡という取り返しのつかない事態を招くからだ。
事故が起きた場合、加害者に賠償能力があるかどうかは重要だ。自転車による死傷事故の賠償金は高額になる傾向にあり、車と同様の1億円近い支払いを命じる判決も出ている。しかし、加害者が賠償金を払えなければ被害者は泣き寝入りせざるを得ない。
こうした中、賠償責任を果たせるよう、条例を制定して民間の自転車保険の加入を義務付ける自治体が相次いでいることに注目したい。既に6府県4政令市で条例が制定され、今年だけでも埼玉県や京都府、相模原市で保険加入が義務化された。他の自治体でも条例化への動きが広がる。
条例の内容は自治体によって異なるが、自転車の利用者全員を対象に保険加入を義務付ける点は共通する。中には、自転車販売店や学校に対し、自転車を購入した客や利用する児童・生徒の保護者が保険に加入しているか確認するよう求める条例もある。
自転車保険は月額数百円で加入できる。万一のことを考えれば決して重い負担ではあるまい。
政府も、法律で保険加入を義務付けることの必要性について検討を始める方針だ。自治体による条例制定の効果も検証し、実効性ある対策につなげてほしい。

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