e次世代がん治療実用化へ

  • 2018.07.02
  • 情勢/テクノロジー

2018年6月30日



大阪医大にBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の拠点
ピンポイントで細胞破壊
照射時間短く負担を最小限に  薬剤などの承認後、診療開始



日本が世界の研究をけん引する「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)。がん細胞だけをピンポイントで破壊する"次世代のがん治療"として、実用化が現実味を帯びている。こうした中、大阪医科大学の本部キャンパス(大阪府高槻市)に4日、BNCTに特化した共同利用型の医療拠点「関西BNCT共同医療センター」(小野公二センター長)が開院した。

関西圏は、BNCT実用化の一翼を担う研究機関が数多くある。世界トップクラスの臨床研究の実績を誇る京都大学原子炉実験所をはじめ、大阪大学、大阪府立大学、化学メーカーなどだ。

大阪府は2009年から、BNCTの実用化をめざし産学官連携の会議を設置。BNCT研究のネットワーク化が進む大阪・関西の地の利を生かし、「関西BNCT共同医療センター」の開院に至った。

同センターは、鉄筋コンクリート造り地下1階、地上3階建て。BNCTを専門とした共同利用型の医療拠点として、治療のほか、臨床研究の推進や治療に携わる人材育成に寄与するのが目的だ。

院内でひときわ注目を集めるのが、1階にある小型のBNCT用加速器(サイクロトロン)。従来、原子炉から取り出していた中性子を発生させる元となるものだ。また、がん細胞に対するホウ素化合物の集積度合いを調べ、事前にBNCTの効果を測定する陽電子放射断層撮影(PET)検査を支える設備もそろう。

BNCTの利点は、ホウ素から出る放射線が細胞1個分ほどの範囲しか届かないため、正常な細胞に与える影響が極めて小さいこと。また原則1回の照射(30〜60分)で済むことから、患者の日常生活への影響も最小限に抑えることができる。このほか、悪性脳腫瘍や頭頸部がんなど難治性のがん、通常の放射線治療後に再発したがんにも効果が見込まれており、「治療の選択肢が増えていく」と医療関係者の期待も大きい。


府議会公明党も一貫して後押し


府議会公明党(八重樫善幸幹事長)は議会質問を通しBNCTの研究・実用化をはじめ、拠点の形成を一貫して後押ししてきた。09年5月の本会議一般質問では、川岡栄一議員が「(BNCTの)研究が急速に進展している機を逃さず、府としても積極的に取り組むべき」と主張。また15年10月の本会議代表質問では、垣見大志朗議員がBNCTに携わる専門人材の育成に対する府の取り組みをただしたのに対し、府は「大阪がBNCTの人材育成拠点となるよう研究機関や民間企業と連携しながら環境整備を進めていく」と答えていた。

関西BNCT共同医療センターの開院に先立ち、府議会公明党はこのほど、杉久武参院議員と共に現地を視察し、関係者と意見を交わした。

小野センター長は「当面はPET検査を実施していく。今後、BNCTに関する医療機器や薬剤の承認を踏まえ診療を開始していきたい」と説明。八重樫幹事長は「一日も早い診療開始に向けて引き続き支援したい」と話していた。

視察を終えた杉氏は「最新のがん治療法であり、多くの人が治療の機会を得られるよう後押ししていきたい」と語った。



【ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)】


原子核を構成する素粒子の一種・中性子と反応しやすいホウ素化合物をがん細胞に取り込ませ、中性子とホウ素の反応を利用して、がん細胞のみを選択的に破壊する治療法。

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