eはやぶさ2 誕生の謎解明に迫る挑戦

  • 2018.06.29
  • 情勢/解説

2018年6月29日



人類未到の世界への壮大な挑戦に、心躍らせる人は多いのではないか。

日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が、地球から3億キロ離れた小惑星「りゅうぐう」に到着した。2014年12月の打ち上げから3年半、大きなトラブルもなく順調に飛行を続けた末の、最初の関門突破であり、快挙といえよう。日本が世界に誇る高い宇宙探査技術の証しである。

小惑星とは、約46億年前に太陽系が誕生した時、惑星にならなかった天体の破片だ。小惑星には当時の物質がほぼそのままの状態で残されていると見られ、地球をはじめ太陽系誕生の経緯を知る上で重要な手掛かりを得られると期待されている。

はやぶさ2は、りゅうぐうに1年半とどまる予定で、20年末に地球に帰還する。岩石標本の採取といった小惑星内部の物質を持ち帰る世界初の野心的なミッション(任務)に挑む。ぜひ成功させてほしい。

何より、今回の挑戦で最も注目されているのが、生命誕生の謎に迫る探査だ。

りゅうぐうには、生命の元となる有機物を含む鉱物が多く存在する。地球上に生命が誕生したのは、有機物が隕石によって運ばれたという説が有力だが、はやぶさ2で有機物を採取できれば、生命誕生のメカニズム解明につながる可能性がある。関心は高まるばかりだ。

とはいえ、これから行われる小惑星への着地は難関である。予想よりも表面の凹凸が激しいことも分かってきた。8年前に小惑星「いとかわ」の微粒子を地球に届けた先代「はやぶさ」は、プログラムの設定ミスによって深刻なトラブルに見舞われた。慎重な運用を心掛け、万全を期してもらいたい。

今回の研究は、直ちに私たちの暮らしに恩恵をもたらすわけではない。

それでも、はやぶさ2から送られてくる、りゅうぐうの一瞬一瞬の光景は、誰にとっても今しか経験できない貴重なものとなろう。人間の「知」への探求心を大きくくすぐるからだ。

りゅうぐうの名は「浦島太郎」の物語に由来する。2年後、はやぶさ2が持ち帰る"玉手箱"には何が入っているのだろうか。

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