eコラム「北斗七星」

  • 2018.06.22
  • 情勢/社会

2018年6月22日



東京郊外にある近所の団地に週2回、地元スーパーの移動販売車が巡回するようになった。軽自動車の"店"は生鮮食料品や総菜など品ぞろえが豊富。注文にも応じる。団地に一人で暮らす男性(82)が「命綱」と表現していた◆「買い物弱者」「買い物難民」といえば、山間部の集落が発祥地だった。高齢化で住民の足腰が弱る一方、近くの小売店は人口減少の影響で撤退。その悪循環が今、都市部にまで及んでいる。自動車運転免許の自主返納も求められ、より切実だ◆農林水産省の推計では、スーパーなどが自宅から直線距離で500メートル以上離れている上に車を利用できず、食料品を買うのに苦労している65歳以上の人は824万6000人(2015年時点)。実に65歳以上の4人に1人だ。中でも東京・名古屋・大阪の三大都市圏は10年前に比べ44.1%増という◆国や自治体が何もしていないわけではない。移動販売、宅配、買い物代行、交通支援などの補助事業は多彩である。だが、民間事業者は採算面で、行政は財政負担で常に難しさが伴う◆大きな課題は国の所管省庁が明確ではなく、対策がバラバラな点だ。施策は6府省にまたがっている。地域包括ケアシステムなどの視点に立ち、対策を効率良く展開できないだろうか。「弱者」「難民」を何とかして助けたい。(東)

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