e初の米朝首脳会談 非核化を具体的に進めてこそ

  • 2018.06.14
  • 情勢/解説
2018年6月14日


トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がシンガポールで会談した。
1950年に始まった朝鮮戦争以降、敵対関係にあった米朝両国の首脳が初めて会い、握手を交わし、新たな関係構築へ踏み出したのである。それ自体、歴史的な会談となったことは確かだ。
最大の焦点は、米国が主張する「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)を、北朝鮮が受け入れるのかという点にあった。
会談後の共同声明では、4月の南北首脳会談で合意した「朝鮮半島の完全な非核化」を再確認するにとどまり、CVIDの文言は盛り込まれなかった。最大の関心事であるだけに、期待外れの感は否めない。
非核化の作業をいつから始め、いつ終えるのか。核兵器や核物質をどう処理するのか。全ての工程をどう検証するのか。こうした具体的な道筋も不透明なままだ。
トランプ氏は「非核化のプロセスは極めて早く始まる」と強調し、来週にも米朝間で実務者協議を開催する方針を示した。話し合いの行方を注視したい。
正恩氏は「世界は重大な変化を見ることになる」と述べたが、具体的な行動が問われているのは北朝鮮の方だ。この点、北朝鮮に体制保証を約束したトランプ氏が、当面の制裁維持を譲らなかったことは妥当な判断といえよう。
特に指摘しておきたいのは、非核化に向けた取り組みを前に進めねばならないという点だ。共同声明の内容を両国が誠実に実行することはもちろんのこと、国際社会も結束して対応すべきである。
会談の席上、トランプ氏が日本人拉致問題を提起したことは特筆に値する。首脳会談で第三国の課題を取り上げることは異例とされ、安倍晋三首相ら日本政府による粘り強い働き掛けが実ったものだ。報道によると、北朝鮮は拉致問題について、従来の「解決済み」との見解を示さなかったという。
米朝会談後、安倍首相は拉致問題について「日本が北朝鮮と直接向き合い、解決していかなければならない」と表明した。会談で取り上げられたことを好機と捉え、対話による解決につなげたい。

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