e巨大地震の被害推計 防災・減災加速し"国難"避けよ

  • 2018.06.14
  • 情勢/解説
2018年6月13日


巨額の被害推計にたじろぐことなく、防災・減災を着実に前に進めたい。
東海や西日本を中心に甚大な被害が想定される南海トラフ巨大地震。揺れや津波により、発災から20年間の経済的な被害が1410兆円に達するとの推計を土木学会が公表した。
これは、今年度の国の一般会計予算約98兆円のおよそ14倍に相当する数字だ。経済活動の低迷などにより、被災地の納税者1人当たりの所得は、20年間の累計で最大2000万円以上も減るという。
想像を絶する深刻な事態である。土木学会が「国難」と表現し、「日本が東アジアの最貧国の一つになりかねない」と警鐘を鳴らしたのは当然といえよう。南海トラフ地震が発生する確率は、今後30年間に70~80%とされる。対策は待ったなしだ。
土木学会も、道路や港湾、建物の耐震化を進めることにより、地震や津波による長期的な経済被害を4割ほど減らせるとしている。ただし、対策の完了期間を「15年程度で」としており、残された時間は長くはない。
既に国は、2014年に策定した自然災害に備えるための指針「国土強靱化基本計画」に基づき、重要建築物の耐震化や堤防の整備などを進めてきた。計画は年内にも見直される予定で、今回の推計をどう反映させるかが焦点となろう。
土木学会は今回、首都直下地震についても言及し、20年間の経済的な被害が778兆円になると推計している。その上で、被害を軽減するためには、インフラの耐震化などと同時に、東京一極集中を緩和することが必要との見解を示している。この点も検討を急ぐべきだ。
大規模地震への備えとしては、ソフト面の対策も欠かせない。民間も含め実効性ある事業継続計画(BCP)の策定や、災害に関する正確な情報を行政、専門家、企業、市民などの間で共有し的確な避難行動などにつなげる「リスクコミュニケーション」の強化も大事な論点である。
そして何より「人」である。防災教育や訓練などあらゆる機会を通し、一人一人が災害への備えを万全にする必要がある。

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