eコラム「北斗七星」

  • 2018.06.14
  • 情勢/社会
2018年6月13日


マレー語で「平穏」を意味する島、セントーサを訪れる時は、ロープウェイがお勧めだ。空中遊覧は気分を高揚させるだけでなく、自身の運命が100%だれかの手に委ねられていることを思い出させる◆歴史的な会談にロープウェイを使ってもらえなかったのは残念だが、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が交渉のテーブルに着いたことに意味がある。朝鮮半島の完全な非核化へ向けて、一歩を踏み出した。「約束を守る最上の方法は、決して約束しないこと」(ナポレオン)という交渉の鉄則を、今さら持ち出すまでもあるまい◆トランプ米大統領が拉致問題を提起したのは日米連携の成果だ。横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(82)は「よくここまで来たなという思い」と心境を語った。拉致問題は一気にヤマ場を迎える◆交渉学の権威であるロジャー・フィッシャーはハーバード流の交渉術を提唱した。交渉を、勝ち負けと捉えるハード型や、相手との関係性を重視するあまり譲歩を重ねるソフト型に対し、「困難な課題の解決に協働で当たる意思決定の問題」と捉える◆肝要なのは、金党委員長が「拉致被害者全員を帰国させる」と決断することだ。拉致問題の解決抜きに、北朝鮮への経済支援はあり得ない。いよいよ、日本の交渉力が試される。(也)

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ