e「温泉エビ」に託す故郷の復興

  • 2018.06.11
  • エンターテイメント/情報

2018年6月9日



大震災7年3カ月へ

土湯温泉(福島市)



あさって11日で東日本大震災から7年3カ月。大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を誓い、故郷の福島で走り続ける公明党のOB議員がいる。福島市にある土湯温泉の再興へ挑む、その姿を紹介する。=東日本大震災取材班


釣り堀、串焼き、にぎわう


「やった! 釣れた!」。温泉街の一角から、子どもの歓声が聞こえてきた。株式会社元気アップつちゆ(加藤勝一社長=元公明党福島市議)が運営するオニテナガエビの釣り堀だ。昔取った杵柄よろしく、腕前を披露しようと張り切るシニア世代の姿もちらほら。釣ったエビは、その場で串焼きにして食べられる。

原則、土日のみの営業だが、「大型連休で1日100人、通常時でも50人ほどが訪れる」(加藤社長)にぎわいようだ。あまりの盛況でエビの確保が追いつかず、現在は一時休業中。7月21日の再開をめざし、エビの産卵・養殖に力を入れている。

"安定供給体制"が確立できれば、「つちゆ湯愛エビ」としてブランド化し、釣り堀だけでなく、エビせんべいなどの加工品として売り出したり、温泉街の旅館に食材として提供したりする計画だ。


地熱発電の温排水生かし養殖


しかし、なぜ山奥の温泉街でエビを養殖しているのか。その理由は、原発事故からの復活に向け元気アップつちゆが整備した、温泉熱を活用したバイナリー発電(地熱発電の一種)で生じる約20度の温排水にある。

この水を活用して何かできないか調査した結果、温泉の源泉で水をさらに少し温めれば、オニテナガエビの養殖が可能と分かった。東南アジア原産の淡水エビで、(1)食べておいしい(2)成長が早い(3)釣りができる――と、付加価値が三拍子そろっている。

早速、加藤社長は、青森県弘前市にあるオニテナガエビの養殖施設を訪問。そこで技術を習得した山崎充さんに頼み込み、土湯温泉で養殖の指導役を務めてもらうことにした。昨年5月に施設が完成し、養殖を開始。今年4月に釣り堀をオープンさせた。


観光客数、落ち込みから回復


バイナリー発電やエビの養殖など、地域資源を使ったまちおこしが評判を集めた結果、土湯温泉の観光客数は大震災後の落ち込みから回復し、にぎわいを取り戻した。視察者の数も多く、その半分が温泉街に宿泊している。

加藤社長は、「原発事故というピンチをチャンスに変えようと挑戦してきた。大震災の被災地に限らず、疲弊する温泉街を復活させるモデルケースになれば」と意気込んでいる。

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