eコラム「北斗七星」

  • 2018.05.29
  • 情勢/社会

2018年5月29日



ハンセン病患者の強制隔離と収容を定めた「らい予防法」が1996年に廃止されて22年。その後、さまざまな支援策の実施とともに、差別解消への歩みが続く。しかし、国立ハンセン病療養所から退所した元患者155人に聞き取り調査したところ、6割強の人が、出身地以外を選んで住んでいた◆その理由は、「実家、兄弟に迷惑をかける」「帰りたくても、帰れなかった」など。中には「親が帰ってくるなと言った」という人も◆病歴や療養所にいたことを配偶者や子ども含めて「誰にも話していない」人は約2割。友人関係についてある人は、「酔ったら口走るかも不安。心を開いて話すことができない」という◆「病歴が分かるのが怖く」病院に行けなかったり、仕事、住まいを「転々とした」人も。それゆえ、戦後の退所者が1万人を超えるものの、その追跡は難しい。調査に応じてくれた155人の平均年齢は77歳。退所後50年以上を数える人が多くを占める(ふれあい福祉協会調べ)◆人生の大半を、差別におびえ続けてきた姿が浮かび上がる。2002年3月、当時の坂口力厚労相(公明党)は、謝罪文の中で、「ハンセン病患者・元患者が地域の中で幸せに暮らしていくことができるよう」行政の努力と国民の理解を求めた。その歩みはまだ半ばだ。(繁)

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