e核兵器禁止条約とNPT(核拡散防止条約)

  • 2018.05.22
  • 情勢/国際

2018年5月22日



再検討会議準備会合から考える



191カ国が加盟する核拡散防止条約(NPT)は2020年に再検討会議を開く。その第2回準備会合が4月末から5月4日までジュネーブで行われ、NPTの場で初めて核兵器禁止条約が議論された。両条約の意義を解説するとともに、今後の課題を公明党核廃絶推進委員会座長の浜田昌良参院議員に聞いた。


二つの条約の関係


廃絶への方法が相違。不拡散の意義は確認


核兵器に関し、二つの重要な条約が並立する時代が近づいている。

一方は1970年発効のNPTであり、他方は、2017年7月に国連で採択された核兵器禁止条約(核禁条約)だ。後者は未発効だが、圧倒的多数で採択された経緯もあり発効は確実視されている。

NPTは、米英仏ロ中の5カ国を「核兵器国」(核保有5カ国)として核保有を認め、それ以外の国の核保有を禁じた。不平等であるが、核保有5カ国に核軍縮義務を課している。これに対し核禁条約は、初めて「核兵器は国際法違反」との規範を確立した。

核保有5カ国は、安全保障環境が厳しい現在、核抑止(核使用の威嚇によって相手に攻撃を思いとどまらせること)が必要と主張している。しかし、核禁条約を推進した非保有国は、核兵器による被害者の迅速な救出は不可能であり、被爆の苦痛は世代を超えて続き、環境も破壊する事実を突き付けて非人道性を糾弾し、核保有も核抑止にも反対している。

核廃絶への方法も、核保有5カ国は着実な核軍縮の推進が現実的だと主張。非保有国は、NPTは生ぬるく、核を違法化し一気に廃絶するしかないとの考え方である。

核禁条約の採択当初、双方は激しい言葉で非難の応酬を繰り広げた。しかし、核禁条約の採択後、初めて開かれた今回のNPT準備会合では、会合を決裂させるほどの非難合戦にはならなかった。これは相互理解が進んだ結果ではなく、対話もできない冷たい対立に陥っているためだ。

「溝はむしろ深まった感が強い」(長崎大学核兵器廃絶センターのブログ)というのが実情だったが、同時に、NPTの核不拡散体制の重要性は、ほぼ全参加国が再確認した。「この点は共通基盤として認められたといってよいだろう」(同ブログ)との評価の声もある。


橋渡し役担う日本


保有国と非保有国の対話の糸口は見えず


日本は唯一の戦争被爆国として核廃絶を訴える立場であると同時に、現実には、米国の拡大抑止(核の傘)に安全保障を依存している。そのため、核抑止も禁じた核禁条約には、核の傘の下にある韓国やオーストラリア、NATO(北大西洋条約機構)諸国などと同様、加盟はできないと日本政府は表明している。

しかし、対立の膠着状態が続けば核保有5カ国の核軍縮への意欲もそがれる。日本政府は双方の「橋渡し役」となるための努力を続けている。その重要なステップが双方の有識者からなる「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」の設置(昨年11月に初会合)だった。

賢人会議は3月に提言をまとめ、NPT準備会合に外相としてただ一人出席した河野太郎外相によってその内容が紹介された。

提言は多岐にわたるが、双方の考え方を集約するための基盤作りとして、「安全保障と軍縮の関係に関する困難な問題」、すなわち、核抑止の問題について、核保有5カ国と非保有国が議論できるような議題を設定することの重要性を強調している。

この提言は一定の評価を得たが、提言に基づいた取り組みを進めようとの意向は示されなかった。提言が対話の糸口になるかどうかは、日本政府の努力にかかっている。


賢人会議の提言実現が重要


公明党核廃絶推進委員会座長 浜田昌良参院議員に聞く


――準備会合の評価は。


浜田 核廃絶に向け、核を違法化した核禁条約のような「規範重視の考え方」と共に、NPTのように具体的に核軍縮を進める「現実重視の考え方」の必要性も確認された。意義深いことだ。

また賢人会議は、核保有5カ国と非保有国の対立を乗り越えるために、信頼醸成のための核に関する透明性の確保、核廃絶実現に必要な検証体制の構築、核抑止論など困難な問題に取り組むための対話型討論の必要性の3点を提言した。これらは準備会合「議長サマリー」で紹介され、実現への取り組みを歓迎すると記載された。このことは、日本が「橋渡し役」として一定の役割を果たしたことの成果だと思う。


――今後の展望は。


浜田 核禁条約への賛否の意見に示されたような核廃絶への異なる考え方を、どう集約していくかは引き続き課題となる。公明党の要望もあり賢人会議は今後も議論を継続するので注目したい。


公明党は市民社会と連携しながら、政府が「橋渡し役」を果たせるように多面的に支援していく。賢人会議は「議論における礼節と異なる意見を尊重する姿勢を取り戻さなくてはならない」と強調した。時宜を得たアピールだ。双方の対話実現など賢人会議の提言の実現が重要になる。

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