e注目集める"渋消式"消火法

  • 2018.05.09
  • 生活/生活情報

2018年5月9日



放水開始時間を短縮
群馬・渋川市など渋川広域消防本部



群馬県の渋川市、吉岡町、榛東村を管轄する渋川広域消防本部(通称・渋消)が全国から注目を集め、視察が相次いでいる。「渋消式」と呼ばれる独自に開発した消火方法が効果を上げているほか、若手人材の育成などにも定評がある。2013年7月からこれまでに視察や研修に訪れた消防関係者は、46都道府県から延べ7200人以上に上る。


ホースの畳み方まで徹底して効率化


隣家への延焼 3年連続ゼロ


「渋消式」の最大の特長は、火災現場に到着してから放水開始に至るまでの時間の短さだ。

渋消本部では事前に隊員が市内を回り、消火栓や防火水槽の位置を確認し、ホースをつなぐ段取りを円滑にできるようにしている。

また、既存の消防用ホースバッグを改良。格納できるホースの本数を2本から3本に増やしたほか、生地も熱に強い丈夫な素材にした。

さらに、ホースの畳み方や連結法、消防車の内装まで、至る所に考えを巡らせ消火に関する効率的な方法を追求してきた。

その結果、現場到着から放水開始までの時間を、国の指針では延焼阻止の目安として2分とするのに対し、渋消本部は訓練ベースで平均1分17秒に短縮。火元建物以外に燃え広がった火災件数の割合を示す延焼率に関しては、全国平均が19.5%(2016年)であるのに対し、15年から3年連続でゼロを達成した。福田浩明消防長は「消防活動の基本である放水活動を突き詰めてやってきた成果」と強調する。

渋消本部の消火活動強化のきっかけは、2009年に起こった市内の高齢者施設「静養ホームたまゆら」での火災。3棟が焼け、10人が亡くなった。一方、11年には渋消本部の隊員の世代交代が進み、若手が増加。青山省三・前消防長を中心に、隊員の意識向上に向け、人材育成にも力を入れるとともに、消火方式の効率化に向けた検討を開始していた。

視察や研修に訪れる消防関係者からは「消防のプロとして、これから何をしなければならないのか、とても勉強になった」「若い職員がみんな自信を持って仕事をやっている」などと、高く評価されている。

自治体側も空き家情報や一人暮らしの高齢者宅の情報を渋消本部と共有するなど、円滑な消防活動の取り組みを後押し。公明党の安カ川信之・渋川市議は、定期的に渋消本部の関係者らと意見交換しながら、議会質問などを通じて取り組みを推進してきた。

安カ川市議は「"渋消"のさらなる充実を推進していくとともに、住民の自主防災組織の結成促進などにも、いっそう力を入れていきたい」と話していた。

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