e学校の防災対策 地域との協力体制どう築くか

  • 2018.05.01
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年5月1日(火)付



子どもたちの命をいかに守るか。学校の防災対策のあり方を今一度、見直したい。

東日本大震災の津波で亡くなった宮城県石巻市立大川小学校の児童の遺族らが市と県に賠償を求めた裁判で、仙台高裁は、学校側の防災体制に不備があったことを認めた。

1審の仙台地裁は地震後の避難についての過失を認めたが、仙台高裁は、地震発生前の防災対策も不十分だったとして1審より約1000万円多い賠償を市と県に命じた。

公明党の井上義久幹事長が「さまざまな危険に対応できる体制整備を求めた判決」と指摘する通り、国をはじめ、自治体や教育現場は重く受け止める必要がある。

そもそも学校の安全対策については、学校保健安全法で、防犯面も含めた「危機管理マニュアル」の策定を学校に義務付け、関係機関と連携するよう求めている。

ここで大事なことは、マニュアルが万一に役立つのかどうか、検証作業を怠ってはならないということだ。

大川小のケースでは、津波襲来の7分ほど前に市の広報車が津波が来ていることを告げていたが、児童らは標高の高い裏山には避難しなかった。市が作成したハザードマップで、同小が津波の予想浸水域外に立地していたことが理由の一つとみられる。

学校と市の連携がしっかり取れていれば被害は防げたかもしれない。地域が一体となった協力体制を築くことの重要性を改めて痛感する。

この点、南海トラフ巨大地震に備えた高知県のある小学校の取り組みを紹介したい。同校では2016年度に、避難生活や炊き出しの訓練を地元消防団などと連携して行ったほか、識者の指導の下、学校周辺の危険箇所を調査し、防災マップにまとめて地元住民に配布した。

政府も、昨年3月に策定した「第2次学校安全推進計画」や、今年度の学校安全総合支援事業で、学校と保護者、地域住民、外部専門家らとの連携体制の構築を強く推進している。

大川小の悲劇を繰り返さないために、学校が地域と協力して実効性のある対策をどう構築するか。この課題に関係者は真剣に向き合うべきである。

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