eコラム「北斗七星」

  • 2018.05.01
  • 情勢/社会

公明新聞:2018年4月28日(土)付



心の中で何度も「頑張って」とつぶやいた。2年ほど前、めっきり口数が少なくなった母を病院に連れ出した時のこと。認知症の簡易診断テストを試みたが、医師の質問に答えがなかなか出てこなかった◆テストの名称は「長谷川式認知症スケール」。医療の現場で幅広く使われている。「歳はいくつですか」から始まり、その日の年月日と曜日、100から7を引く計算など全9問から成る。所要時間は10分程度。30点満点で20点以下だった場合、認知症の可能性が高いと判断される◆最後の9問目。「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」。眉間にしわを寄せ、必死に答えようとするが言葉にならない。「グリーン......」で時間切れに。診断は「アルツハイマー型の疑い」だった◆昨年、そのテストを開発した精神科医の長谷川和夫さんが自らも認知症であると公表した。半世紀以上も認知症の診療と研究に携わってきた第一人者である。現在89歳。自身の認知症は「年を取ったんだからしょうがない」。今までと変わりなく「生きている限り、人様の役に立とう」と◆認知症の進行を遅らせる薬を早めに服用し始めたおかげか、母は元気だ。母の日のお祝いで好物のお寿司を食べに行く約束も忘れていない。"おかしいな"と思ったら、早期の診断と治療を。(東)

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