eコラム「北斗七星」

  • 2018.04.09
  • 情勢/社会

公明新聞:2018年4月7日(土)付



土井晩翠。哀愁を帯びた『荒城の月』や『星落秋風五丈原』の作詞者としてご存じの人も多いだろう。詩人として初めて文化勲章も受章している◆実は晩翠には興味深い逸話がある。姓の「土井」の読み方は、本当は「つちい」と読むのが正しかったのだ。ところが世間が皆、「どい」と言う。そうではないと気色ばんでも、多勢に無勢。とうとう根負けして、「どい」と名乗ったという◆「人名ですら動揺する。まったく漢字のせい」(外山滋比古著『日本語のかたち』河出文庫)。軽妙な指摘だが、漢字の表記は時に動揺を誘う。最近目にした「重老齢社会」。ずしりとくる言葉だ。75歳以上の人口が65~74歳の高齢者を上回り、社会に影響が及ぶことを指している◆実際、個人消費の約半分は60歳以上が占め、株式など有価証券の多くを70歳以上が保有している(日経)。ところが75歳を境に、要介護認定を受ける人が前の世代の3%から23%へと急上昇。お金も回らなくなり、成長が止まるという理屈だ◆そういえば、「きんは100歳、ぎんも100歳」のコマーシャルでかつて話題になったぎんさんの娘たちの今が新聞広告に載っていた。元気な姿の横に、「ちたよさん 今年100歳」「みねよさん まだ94歳」の一文も。「重老齢社会」は警句である。改革遂行へ。停滞を打破したい。(田)

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