e薬の副作用情報  国が直接収集する意義は大きい

  • 2018.04.05
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年4月5日(木)付



薬の副作用による被害をできる限り抑えたい。

厚生労働省は4月から、医薬品の副作用を迅速に把握するため、医療機関が保有する処方状況や患者の診療に関する情報を収集・解析できる「医療情報データベース」の本格運用を開始した。

医療情報のデータベース化は、薬害C型肝炎などの被害者が要望を重ねてきたものであり、公明党も実現を訴えてきた。医薬品の安全性向上につなげてほしい。

仕組みはこうだ。電子カルテや診療報酬明細書から氏名など個人情報を削除したものを、国が医療機関から提供を受けてデータベース化し、薬を投与された患者にどのような症状が出たのか把握する。

この情報を、国はもちろん製薬会社や研究者が調査・解析し、医療機関への迅速な注意喚起に役立てて被害の拡大を防ごうというものだ。

ここで注目したいのは、国が医療現場から情報を収集できるようにした点である。

副作用に関する情報はこれまで、医療機関からの報告をもとに主に製薬会社が把握してきた。しかし、患者の症状が疾病によるものか副作用によるものかの判別は難しく、医師が副作用を疑わなければ報告されなかった。

製薬会社が報告を怠った事例もある。製薬会社には、患者の死亡や障がいが副作用によるものと疑われる場合、国への報告が義務付けられている。ところが、2015年には大手製薬会社が5000件以上の重い副作用を報告せず、15日間の業務停止を命じられた。

こうした教訓から、医療機関や製薬会社の報告だけに依存せず、国が直接情報を収集するわけで、意義は大きい。

既に米国の食品医薬品局(FDA)は約2億人の大規模なデータベースを構築し、服薬による重篤な出血例の掌握などで実績を上げている。

現在、データベース化に協力するのは全国の23病院で、患者数は400万人に上るが、希少な疾病に関する薬の副作用の解析には足りないとされる。今後は対象病院の拡大が焦点になる。

極めて高度な個人情報を扱うだけに運用に関する透明性を可能な限り確保し、国民の信頼を得る努力も不可欠だ。

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