eコラム「北斗七星」

  • 2018.03.14
  • 情勢/社会

公明新聞:2018年3月14日(水)付



史上初の米朝首脳会談の開催―北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が切ったこの外交カードをどう見るか。「朝鮮半島の非核化へ大きな一歩」との期待感がある一方、「核・ミサイル開発を進めるための時間稼ぎにすぎない」という警戒論も根強い◆作家の塩野七生さんは著書『ローマ人の物語』の中で「外交とは、可能なかぎり少ない『ギブ』で可能なかぎり多く『テイク』する技能」と指摘している。より少なく相手に与え自分はより多く得ることが外交の肝という意味だ◆北朝鮮側の主張を当てはめれば「ギブ」は非核化であり「テイク」は北朝鮮に対する軍事的脅威の解消や体制の保証となろう。しかし、北朝鮮は「核開発の凍結」「核兵器と核計画の放棄」といった約束を破ってきた。結果的に「ギブ」はゼロだったのである◆ただ、これまでと決定的に違うのは、米側が「北朝鮮で物事を決めることができる唯一の人物」とする金委員長が、交渉の場に直接臨むという一点だ。これが期待感の根拠にもなっている◆外交は英語で「ディプロマシー」。その形容詞である「ディプロマティック」には「駆け引き上手な」という意味もある。とはいえ、北朝鮮に駆け引きをする猶予を与えてはなるまい。非核化への具体的な行動なくして「テイク」はあり得ない。(幸)

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