eコラム「北斗七星」

  • 2018.03.12
  • 情勢/社会

公明新聞:2018年3月12日(月)付



「春の海終日のたりのたりかな」(蕪村)。穏やかな波が被災地の浜辺に寄せては返す光景を思い浮かべたい。日本列島は大雪と厳寒の冬だった。それだけに、うららかな春が恋しい◆今冬は海の中まで不順だったようだ。先月、青森県や北海道の浜に大量のイワシが打ち上げられた。直接的な原因とされるのが寒波に伴う急激な海水温の低下。寒さで仮死状態になったのだという◆デリケートな魚である。漢字で書くと、魚へんに弱いで「鰯」。陸に揚げるとすぐに弱って腐るから「弱し」が語源だとか。下賤な魚の意で「卑し」からイワシになったとの説もある。食べてはDHAやEPAが豊富で健康に良い。その群れは竜巻のように見えて水族館で人気。なのに、名前だけ少し残念だ◆目下、児童書『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)が大ヒット中。続編を合わせた累計発行部数は160万部を突破した。そこに登場する「一生けんめいなのに、どこかざんねんないきものたち」が実に味わい深い◆「スカンクはおならがくさいほどモテる」「オシドリの夫婦はじつは毎年相手が違う」......。どの生き物もいとしく思える。だが「地球の環境がガラリと変われば、あっという間にほろんでしまう」と同書。イワシは命懸けで気候変動の"潮目"を教えてくれているのだ。(東)

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