e3.11大震災7年 教訓を未来に生かす方策探る

  • 2018.03.06
  • 生活/生活情報

公明新聞:2018年3月6日(火)付



党宮城県本部・復興フォーラム パネルディスカッションから
子どもの孤立化を懸念
被災者の生活再建へ備え万全に



東日本大震災の発災から間もなく7年を迎える。この間に浮き彫りになった課題は何か、解決への処方箋はあるか、そして教訓を未来にどう生かしていくか。公明党宮城県本部(庄子賢一代表=県議)が3日、仙台市内で開催した「みやぎ復興フォーラム2018」におけるパネルディスカッションの模様を紹介する。

パネルディスカッションのテーマは「人と人、地域と地域を結ぶチカラ」。株式会社MCラボの阿部清人代表取締役の進行で、パネリストの4氏は自らの復興への取り組みや活動を通じて見えてきた課題やその処方箋を活発に議論した。

「孤立化に向かっている子どもたちをどう支えていくかは今、緊急で必要なことだ」

こう訴えるのは、被災した子どもの居場所づくりや心のケアの支援に取り組む東洋大学社会学部の森田明美教授だ。

親を被災で亡くした子どもは宮城県内だけでも約1800人に上り、その支援策は大きな課題である。とりわけ成長段階にある子どもを孤立させない取り組みが急務だ。子どもを継続的に支えるため、森田教授は「既存の仕組みとは異なる政策を打つべきだ」との考え方を示した。

また、震災の負の記憶や避難先での偏見・差別で東北出身であることを隠そうとする子どももいると指摘。被災した子が子育て世代になる10~20年後を見据え、「子どもが自信を持って、ふるさとを語れるようにしないといけない」と語った。


青少年が活躍できる地域づくりを


誇りの持てる街づくりへ、子どもや若者が地域で活躍できる環境整備を促す意見も出た。

「これからの地域をつくるため、企業が地域に帰属していく必要がある。例えば、スポーツを通して子どもの育成に参加することが、私たち大人の責任ではないか」

石巻日日新聞の近江弘一・代表取締役社長は、震災で社屋が被災しながらも手書きの壁新聞を避難所に貼り、被災者に情報提供を続け、これまで子ども新聞の製作や地元サッカークラブの運営を通して青少年の育成にも尽力してきた。子どもたちが地域に根差して活躍するには「さまざまな生活支援を積極的に行う必要がある」と訴える。

また、近江社長は企業やNPOなどが実施する復興支援の費用対効果を高める必要性を指摘し、「地域をどうするかというビジョンをもう一度整理・統合すべきだ」との考えを示した。

震災の教訓をどう未来に生かすのかも論点の一つとなった。

「災害時に、福祉(施策の充実)や生活再建を支援できるようにすることは、これから起こる災害でも対応しないといけない問題。社会の備えとして、東日本大震災の経験から発信していくことが重要だ」

「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」の菅野拓主任研究員は、被災者に密着して生活再建支援に取り組んできた体験を通し、これまでの日本の災害対策がインフラに偏重しがちで、福祉の充実や被災者の自立支援の取り組みが遅れていることを問題提起。その上で、災害時に高齢者や障がい者、女性などが置き去りにされないための法整備の必要性を力説した。

「地域住民と行政、政治家が関わりながら、防災対策を講じていかないといけない。そのために歴史学が有用性を持つことが非常に大事だ」

宮城学院女子大学の平川新学長は、震災後に古文書・文化財レスキュー活動や防災科学研究拠点の運営に携わった経験から、郷土愛を育むために歴史研究が重要な役割を果たすべきと強調。古文書や歴史記録の保全活動を強化し、これらを生かした地震や津波の予測情報などに基づき、地域に適した防災対策を講じる必要性を訴えた。


政治に求められる"寄り添う姿勢"


政治が復興支援で担うべき役割についても意見が交わされた。

森田教授は、被災者の中で、情報不足のため本来受けられるサービスを受けていない人がいる現状を指摘し、「サービスをつなぐ役割、チームとして課題を解決するような横の仕組みが非常に重要だ」と強調した。

菅野氏も「うまくいかない部分が出てくるが、そこをどう全体最適(全体を見て最適化をすること)にしていくかが大事だ。政治や行政、研究者、NPO、事業所が、いろいろな問題を共有し、やるべきことはやる。政治が必要な部分はしっかり対応してほしい」と訴えた。

これに関連して菅野氏は、公明党が被災者一人一人に寄り添った支援を行う「災害ケースマネジメント」を推進していることを紹介し、期待を寄せた。

このほか森田教授は、震災に遭った大学生が現在、主体的に震災を見つめ直す活動に取り組んでいることを紹介し、「私たちは『支え続ける』というメッセージを、どういう形で若者たちに届けるかを考えていくべきだ」と述べた。

平川学長は、防災教育の学習本を全国の小学校や図書館に普及させる県議会公明党の取り組みに触れながら、「防災教育で公明党が大きな力を発揮してもらいたい」と述べた。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ