e交通事故後遺障害 専門病床の拡大、着実に進めよ

  • 2018.03.02
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年3月2日(金)付



交通事故により重度の障害を負った患者を支える態勢を強化したい。

衆院を通過した2018年度予算案には、交通事故で脳を損傷し昏睡状態に陥った「遷延性意識障がい者」のため、治療態勢を拡充する施策が盛り込まれている。

医療の進歩や安全対策の強化により、交通事故による死者は着実に減少している。一方、一命は取り留めたものの、重度の後遺障害が残る人は年間2000人前後で横ばい傾向にある。

このうち、障害の程度が最も重い遷延性意識障害については、受け入れ可能な専門病床が全国に295床しかなく、日本海側は空白地域となっている。治療態勢は不十分と言わざるを得ない。

遷延性意識障害の専門的な医療機関である国の「療護センター」は、宮城、千葉、岐阜、岡山の4県で運営されている。また、一般病院に委託して療護センターに準じた治療を行う「委託病床」は、北海道、神奈川、愛知、大阪、福岡の5道府県にある。

療護センターは、脳機能を判定する高度な医療機器を導入し、同じ看護婦が一人の患者を継続して受け持ち、体調の変化などに見合った治療プログラムを施すのが特徴だ。これにより、寝たきりの患者が自分で食事を取れるまで回復したケースもあるなど、一定の効果を挙げている。

また、事故から治療までの時間が短いほど意識障害から回復する確率は高くなる。こうした点から、専門の医療施設を増設する意義は大きいと言えよう。

このため療護センターを所管する国土交通省は18年度から、5床程度の小規模委託病床を空白地域で運営する方針を決め、18年度予算案に関連予算を計上した。病床拡大を着実に進めるべきである。

公明党には、本州にのみ設置されていた専門病床を北海道や九州に拡大させるなど、治療態勢の充実に取り組んできた歴史がある。

「これがあったから子どもは生き延びている」。交通事故に遭った中学生の母親が、当時の冬柴鉄三国交相(公明党)に宛てた手紙である。同じように事故の後遺症で苦しむ人や家族に希望を届けていきたい。

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