e相続制度の見直し  高齢配偶者の暮らし守る視点で

  • 2018.02.20
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年2月20日(火)付



超高齢社会が直面する課題を見据えた重要な見直しといえよう。

法制審議会(法相の諮問機関)が16日、民法の相続分野を見直す改正要綱を上川陽子法相に答申した。夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者の暮らしを安定させることが改正の主な目的である。 とりわけ「配偶者居住権」の新設を掲げた点に注目したい。

現行制度では、故人が残した住宅は預貯金などと同様に相続財産となる。しかし、相続人が複数に及ぶ場合は、遺産分割のために住宅を売却せざるを得ないケースがある。

残された配偶者は、住み慣れた住まいを手放し、転居を余儀なくされる。高齢者ほど精神的、肉体的な負担は大きいといえよう。

このため改正要綱では、原則、残された配偶者が亡くなるまで住み続けられる「居住権」を新たに設けるとした。

居住権も相続財産と見なされるが、現在の所有権に比べて低く評価されるため、現金など他の遺産をより多く相続することができる。住宅と金銭の両面から老後の暮らしを守る意義は大きい。

居住権の評価方法は今後の課題である。国民が理解しやすいよう政府には丁寧な説明を求めたい。

さらに改正要綱では、結婚20年以上の夫婦で、故人が生前贈与や遺言で配偶者に自宅を譲る意思を示しておけば、遺産分割の対象から取り分を計算する際、自宅を対象から除外できる規定を設けるとしている。

この点、遺言の活用にも改正要綱は言及している。本人自らが書く「自筆証書遺言」について、財産目録をパソコンなどでも作成することや法務局での保管が可能になる。

遺言による相続は、2014年の司法統計で死亡者数の10人に1人の割合にとどまるなど十分に活用されていない。特に自筆証書遺言は、財産目録まで自筆が求められたり、保管場所に困るなど不便な点が多いからだ。

遺言で本人の意思が明確であれば、遺産相続のトラブルは減らせる。法案化に向けて実効性ある制度設計を進めるとともに、一人一人がスムーズな相続に備える意識を高めていくことも欠かせない。

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