eSDGs(持続可能な開発目標)で地域を活性化

  • 2018.01.25
  • 情勢/経済
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公明新聞:2018年1月25日(木)付



北海道下川町



貧困や格差、気候変動などの課題解決に向け、国連加盟国が2016年1月から30年末の達成をめざす「持続可能な開発目標(SDGs)」について、地方自治体や民間企業で、その理念を施策や事業に取り入れる動きが活発化している。ここでは北海道下川町の取り組みを紹介する。

循環型森林経営、エネルギー自給...まちづくりに理念生かす

北海道北部の上川地方に位置する下川町は、人口約3400人。農林業が基幹産業で、町の面積の約9割を森林が占める。


SDGs17の目標

1、貧困をなくそう
2、飢餓をゼロに
3、すべての人に健康と福祉を
4、質の高い教育をみんなに
5、ジェンダー平等を実現しよう
6、安全な水とトイレを世界中に
7、エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8、働きがいも 経済成長も
9、産業と技術革新の基盤をつくろう
10、人や国の不平等をなくそう
11、住み続けられるまちづくりを
12、つくる責任 つかう責任
13、気候変動に具体的な対策を
14、海の豊かさを守ろう
15、陸の豊かさも守ろう
16、平和と公正をすべての人に
17、パートナーシップで目標を達成しよう


2007年に、自治体運営の指針となる自治基本条例に「持続可能な地域社会の実現」を明記している上、11年には循環型社会の取り組みが評価され、国から環境未来都市に選ばれている町である。同町は(1)森林総合産業の構築(2)エネルギー自給と低炭素化(3)超高齢化社会への対応――を柱に据えたまちづくりが、SDGsの理念と合致している点に注目。昨年から、17項目の目標を自治体政策に取り込む作業を進めている。

例えば、循環型森林経営を取り入れる森林産業では、約4500ヘクタールの町有林のうち約3000ヘクタールの人工林について、製材や木工品製造のために毎年約50ヘクタールを伐採する一方、同規模の植林を実施する。苗を植えて60年後に伐採することで、持続可能なサイクルを確立した。これはSDGs目標の「15、陸の豊かさも守ろう」に通じる。

また、エネルギー自給については、04年に木質バイオマスボイラーを導入。製材の残材などから作る燃料用チップを活用して、町営住宅などの公共施設に熱エネルギーを供給し、全公共施設の暖房の64%、町内自給率の約50%を賄っている。

これにより、年間約1900万円の燃料コスト削減を実現。これは、林業の活性化や雇用創出、低炭素社会の進展につながり、「7、エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「8、働きがいも 経済成長も」などの目標達成に貢献する。


住民を中心にビジョン作成


超高齢化社会への対応にも知恵を絞る。町の中心部から離れた「一の橋集落」では、1960年に2000人いた人口は09年に95人まで減少し、高齢化率は51.6%に達した。そこで、高齢者と若者が集合住宅に暮らす集住化を促し地域食堂なども新設。集住化とエネルギー自給のコンパクトタウンをつくった。

その結果、移住者が増え、16年には人口はほぼ変わらず生産年齢世代が増加し、高齢化率は27.6%に減少した。こうした一連の取り組みは「11、住み続けられるまちづくりを」などに当てはまる。


雇用創出、人口減に歯止め


同町は現在、SDGsへのアクションが雇用創出や人口増など地域の課題解決と活性化につながると捉え、政策の体系化に取り組んでいる。住民を中心に、目標期限となる30年までのビジョンを年度内に作成し、次期総合計画などに反映させる予定だ。谷一之町長は「"幸せ日本一を感じるまちづくり"へ取り組みを加速させ、国際社会の潮流であるSDGsの達成にも貢献していく」と語っている。


「日本モデル」構築へ


政府、自治体や企業を後押し


SDGsで掲げる17の目標は、一つ一つが互いに関連しており、経済、社会、環境におけるさまざまな課題解決の糸口となる。

自治体は「11、住み続けられるまちづくりを」との目標が最も取り組みやすく、ほかの目標も既存の施策に反映しやすい。また、企業にとっては、SDGsに基づき環境や社会問題などの解決を事業と結び付けることで、社会的責任を果たすことにつながる。新事業創出の機会にもなる。

政府は、SDGsを達成していくために16年5月に推進本部を設置。同年12月には、SDGsの推進に向けた実施指針を策定した。

昨年12月26日には、官民一体で目標を達成する「アクションプラン(行動計画)2018」を策定するとともに、優れた団体を表彰する「ジャパンSDGsアワード」の第1回表彰式を行い、北海道下川町が総理大臣賞に選ばれた。政府は今後も自治体や企業の取り組みを後押しし、世界をリードする日本ならではのモデル構築に力を入れている。


SDGs


「誰一人取り残さない」持続可能な世界の実現をめざす、17項目からなる国際目標。15年9月の国連サミットで採択され、16年1月に発効した。気候変動などの地球的課題に対し、先進国と途上国を問わず、国内政策として取り組むよう求めている。

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