e大規模災害団員  地域の人材をさらに消防団へ

  • 2018.01.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年1月19日(金)付



23年前の阪神・淡路大震災では、地域防災の柱である消防署や消防団の対応力をはるかに超えた家屋倒壊や火災が発生し、救助活動の主体は、自力、家族、隣人などが約98%を占めた。

その後も東日本大震災や熊本地震のほか、台風被害、水害など大規模災害が続き、消防団員は本来の任務である消火・救助活動以外にも、避難誘導や情報収集など多様な役割を担うことになった。

しかし、消防団が通常の活動を担う基本団員だけでこうした役割拡大にまで対応することは困難である。昨年末に消防庁の検討会が市町村に設置を提案した大規模災害団員の導入に本腰を入れて取り組む必要がある。

大規模災害団員は、大規模災害の発生に伴って新たな業務が必要となったり、人手不足に陥った場合に限って出動する。これなら、遠隔地に通勤し、日常の消防団活動が難しい人でも参加できる。

具体的な任務としては、災害情報の収集と住民への伝達、安否確認、避難誘導、避難所の運営支援などが想定される。地元の事業所に勤める人が大規模災害団員になれば、雇用主の許可を得て事業所の重機を使ったがれき除去も期待できる。

どれも基本団員と同様に"土地勘"が必要な任務である。郊外の団地でも休日に自治会活動に積極的に参加し、地元を知り尽くしている人材は多い。大規模災害団員であれば希望者を広く募ることも可能であろう。

このような出動と役割を限定された消防団員は、機能別団員という形ですでに成果を上げている。消火・救助活動ではなく、広報や防災イベントの支援などで特技を生かした活動をしている。2009年の約5400人から増え続け、17年は約1万9000人になった。この中には、大規模災害の時にだけ出動する人もいる。今回の大規模災害団員の制度も機能別団員の考え方が基本になっている。

大規模災害団員の導入が必要な背景には、消防団員全体の減少もある。1955年に200万人を、90年に100万人を割り込み、昨年は約85万人になった。地域防災の中核である消防団の人員確保も急務である。

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