e迷惑空き家 円滑に解体

  • 2018.01.15
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年1月15日(月)付



現地リポート
特措法と民法 活用
東京・大田区



人が住まなくなって荒廃した空き家が全国的に増えている。景観面や衛生面の問題に加え、倒壊の危険、さらには犯罪や放火を誘発する恐れがあるなど"迷惑空き家"の存在は、多くの自治体が抱える課題だ。東京都大田区はこのほど、空き家対策特別措置法と民法の制度を活用し、区内の田園調布にある迷惑空き家の解体に踏み切った。

問題の空き家は、東急電鉄の多摩川駅から徒歩10分ほどの閑静な住宅地の中にあった。約70坪の敷地に建坪30坪ほどの2階建て住宅が立っていたが、庭に植えられていた樹木が繁茂し、住宅は森の中に埋もれたような状態だったという。ゴキブリやハエ、カが数多く発生し、近隣の住宅に侵入。ネズミやヘビも出没し、外来種のハクビシンが敷地内に巣を作っていた。

空き家の解体後、敷地と背中合わせの住宅に住む一瀬圭子さんは「本当にホッとしています。最初、区役所に相談に行っても、なかなか解決につながりませんでした」と語る。地域の自治会長である中川幹雄さんは「敷地の木が車道にまで大きく枝を広げ、トラックなど背の高い車両に枝がかかったりして危険だった。秋には落ち葉がすごかった」と話す。


公明区議が尽力


区議会公明党(勝亦聡幹事長)の末安広明議員が相談を受け、現地を訪れた当初、近隣の住宅は害虫がひどく窓も開けられない状態だった。問題の状況を重く見た末安議員は、区議会の場などで粘り強く繰り返し解決を訴えてきた。


住民の安全守る観点から区が不在者財産管理人を請求


住民や末安議員の訴えを受ける形で区は、空き家対策特別措置法に基づき2016年12月、当該空き家を「特定空き家」に認定した。同法は公明党が地方議員と国会議員の連携で推進し、15年に全面施行された議員立法である。区はさらに17年4月、東京家庭裁判所に、民

法25条に基づく不在者財産管理人を請求。同年9月、家裁によって同管理人(弁護士)が選定され、10月から11月にかけて解体工事が行われた。所有者を調査する過程で判明した現所有者の資産から工事費が支払われたため、解体に要した費用で区の負担はなかった。

民法上、不在者財産管理人の請求は、配偶者や相続人、債権者などの「利害関係人」、または「検察官」によって行うことができる。区は特措法に基づく「特定空き家」認定を行ったことで、区民の安全を守る公益的な「利害関係人」の立場が認められ、請求することができた。このような形での空き家解体は、東京23区では世田谷区に続き2例目。費用面も含めて解決したのは初めてであり、全国的に見ても先駆的だという。

大田区建築調整課によれば、区内で現在"迷惑空き家"として把握している家屋は約300軒。迷惑空き家の解体は、特措法に基づく略式代執行などで、地方自治体自らが行うこともできるが、費用の請求が事実上できないことも多い。

末安議員は「公明党が推進した特措法により民法の規定を活用でき、法律の専門家によるスムーズな問題解決につながった。何よりも中川会長をはじめ、地域の皆さんが諦めず行動したことが大きい」とし、「今後とも、区民の暮らしの安全を守るため、取り組んでいきたい」と語っていた。

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