e新幹線の台車亀裂  信頼揺るがす事態。徹底検証を

  • 2017.12.26
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年12月26日(火)付



「安全第一」は、命を預かる鉄道事業者が何より守るべき鉄則である。それが、ゆるがせにされる事態は断じて許されない。

約1000人を乗せた博多発東京行き新幹線の台車に亀裂や油漏れが見つかった問題は、一歩間違えれば大惨事につながりかねなかった実態が明らかになってきた。

車体と車軸を支える台車外枠の鋼に生じた亀裂は、最上部の3センチを残し大きく割れていた。破断寸前であり、高速走行中に割れれば脱線していた可能性も指摘されている。

新幹線開業から半世紀余り。築き上げられてきた安全性への信頼を揺るがしかねない深刻な事態である。

国の運輸安全委員会が新幹線で初めて、事故につながる恐れがある「重大インシデント」に認定し、国土交通省がJR5社に新幹線の台車緊急点検を指示したのは当然だ。

なぜ異常が生じたのか。素材や設計、製造過程に問題はなかったか。運輸安全委員会や、当事者のJR西日本は徹底究明を急ぐべきだ。事前に亀裂を見抜けなかった点検のあり方も見直す必要がある。

最大の問題は、出発20分後に乗務員が異臭を察知しながら、床下点検を実施して運行を取りやめた名古屋まで約3時間も運行を続けた点だ。

乗客も「車内にもやがかかっている」と訴え、岡山駅で乗り込んだ車両保守担当員が異音を確認したため停車しての車両点検を提案したが、それを東京の指令所の判断で運行を継続した。新大阪駅でJR東海に乗務を引き継ぐ際は、「運行に問題ない」と伝えられていたという。

JR西日本が2005年の福知山線脱線事故を教訓に定めた安全憲章には、「判断に迷ったときは、最も安全と認められる行動を」とある。安全最優先の原則が守られず、結果的に重大な危険を放置した原因は何か。当時の対応や判断の過程を詳細に明らかにしなければならない。

鉄道各社では最近、線路や架線の不具合による大規模な輸送障害も相次ぐ。石井啓一国交相は、一連のトラブルを受け、再発防止に向けた有識者会議を設置する方針を示した。現場に精通した専門家の声を基に実効性ある対策を早急に進めてほしい。

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