eコラム「北斗七星」

  • 2017.12.23
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年12月23日(土)付



「諦めるな。光は見えるか。それに向かって這っていくんだ」。先のノーベル平和賞授賞式で、被爆者サーロー節子さんは、原爆で倒壊した建物から脱出した時の体験を語った。核廃絶への被爆者の思いを世界に伝える歴史的な演説だった◆今回の平和賞で特に注目したのは、「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)に授賞したノーベル財団が、核兵器の生産に関わる企業に投資しない方針を固めたこと。「核兵器を斜陽産業に」という欧州発の運動が、市民社会の中で一つの流れになりつつあると感じた◆しかし、核兵器を巡る状況は厳しい。核保有国は核軍縮どころか、増強、近代化を進める。米国の新たな「核態勢の見直し」(NPR)では、核兵器の役割が拡大されるようだ◆調印から30年の中距離核戦力(INF)全廃条約も、ロシアの新型ミサイルの実戦配備で存続が危ぶまれる。一方、ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア、トルコの米空軍基地に配備された約150発の核兵器がロシアを威嚇する◆「平和は追求しなければ永遠に手が届かない。希望より恐怖を選んだときの道を私たちは知っている」。オバマ前米大統領の「プラハ演説」をいま一度、想い起こしたい。核なき世界への道のりは険しいが、諦めず、光を求めて、這ってでも進まねばならない。(中)

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