eコラム「北斗七星」

  • 2017.11.24
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年11月23日(木)付



「(科学は)どこまで行っても休ませてくれない。どこまで伴れて行かれるか分からない。実に恐ろしい」。夏目漱石「行人」(岩波書店)の登場人物は、科学の急速な進歩に怯えた◆「殺人ロボット」の開発や使用の是非を話し合う初の国連公式専門家会議が先週開かれた。人工知能(AI)を搭載したこのロボットは、人の関与を待たず、自らが判断して敵を殺傷するという。SF映画「ターミネーター」に登場するロボットのイメージに近いかもしれない◆この殺りく兵器の正式な定義は決まっておらず、完成品もないようだ。ただ、国際的な歯止めのない中で、武器輸出国による開発競争が進んでいるという。もし実現すれば火薬、核兵器のように戦争の様相が一変すると聞く。AIが人間の生殺与奪の権を握っていいのか。世界の著名なロボット科学者らは、「パンドラの箱を開けるな」と、共同声明を発表し、警鐘を鳴らす◆国際社会は新しい兵器の規制で後手に回った歴史を持つ。しかし、国連の会議では各国の温度差が鮮明になった。ひとまず、議論の継続で一致したが、今後の方向性は見えてこない◆人類がAIにどこまで伴れて行かれるか分からない、では困る。日本は平和国家を標榜する科学技術大国でもある。人類の英知結集に貢献してほしい。(明)

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