e成長と働き方改革両立へ

  • 2017.11.20
  • 情勢/経済

公明新聞:2017年11月19日(日)付



ルポ 「生産性革命」の現場を追う



経済再生が着実に進む中、ICT(情報通信技術)の活用などで労働生産性を高め、成長と働き方改革を両立させる事業者が増えている。先進的な取り組みを追った。


介護サービス(群馬・高崎市)


リハビリメニュー200種超

データ共有で業務負担軽減

利用者の要介護度改善


「システムの導入で無駄な時間が減った分、施設を利用される方と過ごせる時間が増えました」。こう語るのは群馬県高崎市にあるデイサービス施設「日高デイトレセンター」の中島美穂副所長。ICTを活用し、利用者のデータを要介護度の改善に向けたリハビリや介護予防に役立てるプログラムシステム「ICTリハ」のメリットを強調する。

同センターは、2013年の開設時からICTリハを導入。常勤・非常勤を合わせて100人以上の従業員が200種類を超えるリハビリテーションできめ細かなサービスを提供し、お年寄りに好評を博している。利用者数は毎年増加しており、1日に約230人に上る。

ICTリハによって要介護度の着実な改善にもつながっている。過去に要介護度が改善した利用者のデータを分析することで、個人に最適のリハビリメニューを提示するためだ。利用者からは「筋肉が付き、外出の機会が増えた」と喜びの声が聞かれる。

一方、スタッフも効率的な業務が可能となり、館内のパソコンで利用者の健康状態などの基礎データをリアルタイムで共有できる上、書類作成の負担も減少した。同センターを運営する株式会社エムダブルエス日高(北嶋史誉社長)は、他の6施設でもICTリハを導入した結果、介護職員の1カ月の残業時間が導入前より1人当たり最大で約19時間減少した。

「『あそこに行けば元気になる』と、利用した方に言われるのがうれしい」と話すのは、同センターの栗原浩彰所長。スタッフの業務負担軽減と利用者へのサービスの向上に手応えを感じており、「さらに働きやすい職場にし、利用者にもっと喜ばれる施設にしていきたい」と語っていた。


衣料品お直し(仙台市)


7年間で売上げ3倍に

ネットで受注。通販普及で需要増


ズボンの裾上げ、ウエストの調整、シャツの袖口補修......。仙台市内の縫製工場で、女性らが慣れた手つきで作業を進める。中には障がいのある社員の姿もある。

衣料品補修を軸に、靴、バッグなどの修理を手掛けるビック・ママ(守井嘉朗社長)。同社は主に商業施設や駅ビルの中など全国に70店舗を展開し、そこで受け付けた衣料品を補修する「お直しコンシェルジュ」というサービスを行う。

顧客からの依頼はネットで可能。近所のコンビニから衣類を郵送し、補修後もコンビニで受け取れる。ネット通販の普及に伴い、サイズが合わない衣類を購入する消費者が急増しており、お直しの需要も堅調だ。

さらに、全店舗にタブレット端末を導入し、従業員に補修法を画像や動画で分かりやすく説明するマニュアルとして活用している。システムの導入で受け付けや直しのミスも減り、接客や補修作業に集中できる働きやすい環境になった。

これに加え、同社は、補修業務を効率的に受発注できるシステムの販売にも乗り出している。衣料補修は専門性が高くニッチ(隙間)なため、デジタル化が遅れている分野。現在は、自社のシステムを、紳士服店やクリーニング店など同業者向けにも展開する。

海外展開にも積極的だ。タブレット端末で多言語受け付けが可能なシステムを作り、シンガポールに7店舗、ベトナムに1店舗を展開。さらに、従業員、顧客とも子育て世代の女性が多いため、仙台市内で保育園を運営するなど、働く女性の社会進出も後押しする。

ビック・ママの17年5月期の売上高は16億8000万円で、大きな被害を受けた東日本大震災前の10年と比べ約3倍に増えている。

守井社長は「2、3年後を目標に新規株式公開(IPO)をめざしたい」と意欲満々だ。


賃上げ促す施策を展開

党経済産業部会長 富田茂之衆院議員


人口減少社会に突入した日本が、将来的に活力を保つには、社会全体の生産性向上が必要です。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などを活用した第4次産業革命を、しっかりと支えていきたい。

年末にかけて本格化する税制改正や補正・来年度予算編成の議論において、公明党は、現場の声をしっかりと反映させていく決意です。生産性向上のための「ものづくり補助金」の継続・拡充や、適切な労働時間で成果を上げる働き方改革の推進、賃上げにつながる施策の実現に全力を挙げていきます。

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