eジビエ 普及で地域に活力

  • 2017.10.27
  • 生活/生活情報

公明新聞:2017年10月27日(金)付



シカやイノシシなどによる農作物への被害額は全国で年間200億円にも達する中、捕獲した野生鳥獣の肉「ジビエ」を食肉として活用する動きが広がっている。地域の活力に結び付けようと料理メニューや商品開発に挑む各地の取り組みを追った。



試食会や加工食品が人気


長野県のアンテナショップ 消費拡大に手応え 東京・銀座


「おいしい」「柔らかくて食べやすい」――。9月下旬、長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」(東京・銀座)で開かれたイベントで初めてジビエ料理を口にした参加者たちは、こう感想を語っていた。

会場のテーブルには、フランス料理のシカモモ肉のポワレや、シカ肉の油淋鶏などが色とりどりの信州野菜と共に並ぶ。ほどよく焼き上げられた赤身のポワレを口に運ぶと、溶けるように柔らかく、食べやすい。約20人の参加者も美味しそうに、次々とほおばっていく。

料理は同県茅野市のレストラン「オーベルジュ・エスポワール」が提供した。レストランのシェフで、日本ジビエ振興協会の藤木徳彦理事長は「長野県では鳥獣による農作物の被害が相次ぎ、農家にとっては深刻な問題。一方で、栄養価が高く、健康食ともいわれるジビエには多くの味わい方がある。その魅力を生かした料理を楽しんでほしい」と参加者に呼び掛けた。

銀座NAGANOは2014年10月にオープン。県内の企業と提携し、ジビエのジャーキースライスやソーセージなどを開発し、販売する。パッケージの小型化や定期的に開催するイベントが功を奏し、ジビエ商品の人気が高まり、今や売り上げは年間200万円を超えるという。小山浩一所長は「ショップ利用者は年間で約80万人に上り、ジビエの魅力が広がりつつある」と、手応えを感じている。


全国初の「ジビエカー」 高知・梼原町


高知県梼原町は8月から、移動式解体処理車「ジビエカー」を全国で初めて導入している。ジビエカーは長野トヨタ自動車と、日本ジビエ振興協会が開発。2トントラックの車両内に解体室や冷蔵機能、排水機能などを備えており、シカやイノシシを捕獲現場近くで衛生的に解体できる。安全で鮮度の高いジビエの安定的な生産が期待されている。

同町ではシカとイノシシを年間で1500頭以上駆除している。町企画財政課は、ジビエカーを活用し、野生鳥獣の食肉利用を推進する方針。また、地元企業や道の駅などと連携するプロジェクトチームを年内に発足させ、「ジビエグルメ」のまちづくりをめざす。


食肉の衛生管理で国際認定を取得


一方、鳥取県若桜町にあるジビエ処理加工施設「わかさ29工房」は6月、食品衛生管理の国際基準HACCP(ハサップ)の手法を導入する施設として県から認定を受けた。入荷、製造、出荷までの全工程で、熱処理の殺菌温度や密封性などを厳しく監視することで製品の安全を確保する。ジビエ処理加工施設での認定は全国でも珍しい。

施設の食品衛生責任者・河戸建樹氏によると年間約1700頭のシカとイノシシを処理しており、ハサップの認定後、県外のホテルやレストランなどからの注文数が増加しているという。



農水省 モデル地区を12カ所整備へ


政府の推定では、シカとイノシシは国内に約450万頭以上生息している。そのうち年間約112万頭が自治体や猟師らによって捕獲されているが、食用になるのは約1割程度という。

そのため、農林水産省は2018年度に、ジビエの利用拡大を目的に野生鳥獣の捕獲から搬送、加工処理に力を入れるモデル地区を全国で12カ所設置する方針。同年度予算の概算要求では、モデル地区へのジビエカーや処理加工施設の整備支援など約150億円を盛り込んでいる。


公明、保護法改正や衛生指針策定を推進


公明党はこれまで、農作物被害の状況改善へ、野生動物の捕獲体制を強化する鳥獣保護法の改正を後押し。また、ジビエ料理を安全に食べるため、狩猟者や獣肉処理施設の責任などを明記した国の衛生管理指針の策定を主導するなど、ジビエの利活用と地域の鳥獣被害対策に力を入れている。

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