eEU輸入規制緩和 「福島産」 風評払拭の契機に

  • 2017.10.02
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年10月2日(月)付



欧州連合(EU)が東京電力福島第1原発事故後に導入していた日本産食品への輸入規制が、年内にも緩和されることが確実となった。

EUの行政機関である欧州委員会で食品安全問題を担当する常任委員会が承認したもので、早ければ今月末の欧州委で正式決定する。

率直に評価、歓迎するとともに、これを機に中国、香港など厳格な規制を続けている国・地域でも緩和、撤廃が進むことを期待したい。

EUは原発事故後、酒類を除く全ての福島県産食品に放射性物質検査証明書の添付を義務づけるなど、東日本全域の食品の輸入を規制してきた。その後、段階的に緩和されてきたものの、今も福島県はじめ静岡から岩手、秋田に至る13県の食品や飼料の多くに証明書添付を課しており、輸出の障害となっている。

こうした中、福島県の内堀雅雄知事が欧州でトップセールスを行うなど、各県はさまざまな機会を通して日本産食品の安全性をアピール。政府もあらゆる外交チャンネルを駆使し、福島の正確な現状をEU諸国に伝え続けてきた。

その結果、7月に日本とEUが経済連携協定(EPA)で大枠合意した際、EU側が緩和の方針を提示。今回の常任委の承認に結びついた。

欧州委の緩和案によると、今回の措置で福島県産のコメは全面規制解除となり、秋田県産品も全て規制対象から外れる。岩手、宮城など8県の産品の一部も除外される予定だ。「待望の大幅緩和」(農林水産省)と言ってよい。

もとより日本産食品の安全性は十分に確保されている。福島県産のコメひとつを見ても、1000万件を超える放射性物質検査を行っており、基準値を超えるコメは一粒として市場に出回っていない。

にもかかわらず、中国は今なお日本産食品の輸入を全面停止し、検査証明書の添付を義務づけているところも約30カ国・地域に及ぶ。風評という"見えない壁"を崩す困難さを思わぬわけにはいかない。

その意味でも、今回のEUの決定は絶好のチャンスだ。より正確で分かりやすい情報の発信など、政府は風評払拭の取り組みをさらに強化し、"EU効果"の国内外への波及に努めなければならない。

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