e公明 多様な民意を政策に

  • 2017.10.02
  • 情勢/解説
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公明新聞:2017年10月1日(日)付



共同通信社での山口代表の講演(要旨)



公明党の山口那津男代表は9月28日、都内で開かれた共同通信加盟社の報道局長会議で講演し、今回の衆院解散の意義や自公連立政権の成果、公明党の役割などについて見解を述べた。講演の要旨を紹介する。


衆院解散の意義


消費税の使途変更で信問い、北朝鮮対応で政権基盤固める

今回の衆院解散の意義について大きく2点、申し上げたい。その一つは、2019年10月からの消費税率10%への引き上げに伴う増収分の使い道を変更し、これまで必ずしも十分でなかったところに正面から挑む点にある。特に、社会保障は高齢者世代への配分が重点的であったが、今後は若い世代への配分を増やしていくことも重要だ。

具体的には、思い切った教育負担の軽減を図り、幼児教育や高等教育の無償化を進めていく。既に給付型奨学金などは実行し、幼児教育の無償化も段階的に一部実現しているが、大々的に行うということだ。しかし、実行するには莫大な財源が必要になる。そのためには、12年に民主、自民、公明の3党が合意した社会保障と税の一体改革で定められた消費税増収分の使い道を大きく変更することが必要になる。この大きな方針を国民の皆さまに理解していただきたいという問い掛けだ。

もう一つは、北朝鮮問題への対応として政権基盤を固め直すということだ。核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対しては、国連安全保障理事会の新しい決議に基づく制裁措置を、国際社会の連携の下で実行し、北朝鮮に対する圧力を強め、自らの考えを改めるよう促した上で、最終的な外交的解決をめざすことが重要だ。

9月12日から北朝鮮に強い影響力を持つロシアを訪問し、マトビエンコ連邦院議長と会談した際、議長は北朝鮮が現実の脅威になっているとの厳しい認識を示し、国連決議を国際連携で着実に実行しなければならないとの認識で一致したところだ。

そうした北朝鮮問題の展望に立った時に、私なりに捉えているのは、昨年から主要な国々のリーダーが代わり、政権基盤を固め直しつつあるということだ。

今年就任した米国のトランプ大統領は、年内に日本を訪問するという。日米首脳会談では、北朝鮮問題も主要な議題になるだろう。だからこそ、今回の衆院選で自公政権が国民の信任を得て、政権基盤を固め、世界の動きに遅れをとらず、最大の当事者ともいうべき日本がリーダーシップを発揮していかねばならない。そしてその先頭に立つのは、世界の首脳との会談経験が豊富である安倍晋三首相が最適任であると思う。

この二つの点で、信を問うのに十分な大義がある。そうしたことを国民の皆さまに真摯に訴えていきたい。



自公政権の成果


経済再生 着実に前進
軽減税率の導入は公明が主導

自民、公明両党が12年に政権を奪還した当時、われわれのスタートラインはリーマンショック後に、デフレがさらに厳しくなり、経済はどん底に近い状況だった。加えて、東日本大震災の傷も深く、一方で同年夏の社会保障と税の一体改革に関する3党合意を踏まえ、消費税率8%、10%への段階的な引き上げを行う責務を引き継いでのスタートになった。しかし社会保障の安定性や継続性、機能強化を図るのも、当然、長期的に大事な視点だが、肝心な経済の力が弱い状況であれば、消費そのものがおぼつかない。経済の力をしっかりつけるために、経済政策を重視したアベノミクスを推進することになった。

こうして自公政権が12年12月に発足して約4年10カ月。この間、経済再生が着実に進み【表参照】、雇用情勢の改善や賃金上昇などの成果が見られた。失業率が大きく下がり、有効求人倍率は全都道府県で1倍を超えて、1.52倍となり、正社員の求人倍率も1倍を超える状況になった。今春に卒業した大学生、高校生の就職率も過去最高の水準。今は売り手市場となる中、大学生が就職先を選べるところまで来ている。

企業の賃金も2%水準で連続して上昇している。今年の新たな傾向は中小企業にも広がった。企業の実態を見ると、先の月例経済報告では、営業利益は一貫して増える流れだ。

さらに、設備投資は高い水準で伸びている。ただ、営業利益の金額からみると控えめだ。つまり、相当の内部留保があるということだ。海外の経済変動に備えて十分な蓄えをしておきたい企業心理も理解できるが、国内でたまっている分を設備投資に振り向けていく新たな経済政策が必要になる。

また、生産性革命を推し進め、新たな競争力を生み出すためのAI(人工知能)の活用や、IoT(モノのインターネット)の普及、ロボット開発など、新しい分野にあらゆる政策を動員していくことが求められる。

一方、消費税率10%への引き上げと同時に、痛税感を和らげる軽減税率を導入すべきと一貫して訴えてきたのが公明党だ。当初、税収減などを理由に、財務省や野党などからは導入に強い反対意見があった。しかし、消費税率8%への引き上げに伴う消費マインドの冷え込みという教訓や10%引き上げの重みを考え、さらにデフレ脱却への取り組みを併せて成功させるために、公明党は「軽減税率の実現が必要である」と粘り強く訴え、法律に盛り込ませた。



公明党の役割


合意形成で安定へ貢献
中韓との関係改善など推進


公明党は連立政権の中で、「政権の安定」に一定の役割を果たしてきたと自負している。幅広い民意を受け止めることができる公明党が担う部分は大きい。そして、その民意を今度は具体的な政策として実行しなければならないが、自民党との政策的な違いを一つにまとめて合意を形成する力も公明党にはある。

例えば今回(政府が)打ち出す幼児教育や高等教育の無償化も、オリジナルは公明党だと考えている。加えて公明党としては、東京都で実現した私立高校授業料の実質無償化の全国展開を訴えたい。また、消費税率10%への引き上げ時に予定していた無年金者の救済は、すでに実現。今月から支給が始まる。同様に介護保険料の負担軽減や低年金者への加算措置も、前倒し実施することを訴える。

一方、外交では民主党政権で中国との政治対話が崩れたが、政権奪還後、私が訪中して習近平総書記(当時)に安倍首相の親書を手渡し、関係改善に向け対話の扉を開いた。両国首脳が往来できるような関係をめざし、外交的にも連立政権の中で役割を果たしたい。韓国とも同様に長年の関係があり、日中・日韓関係の改善推進でも公明党の役割は多方面にある。



「希望の党」への見解


内実は民進党。旧民主党政権の"悪夢"再来


衆院選は政権選択の選挙だが、その相手がよく分からない。

野党第1党の民進党は、わずか1カ月前に代表選を行い、新代表を選んだばかりなのに離党者が続出。そして離党した人たちが東京都の小池百合子知事が代表となって結成した「希望の党」に参加し、民進党は希望の党との事実上の合流を決めた。これでは希望の党の内実は民進党だと言わざるを得ず、かつての民主党政権を担った人たちが"お面"を替えて登場することになる。

そうなると、あの民主党政権の"悪夢"を思い出さざるを得ない。09年に国民の大きな期待を担って生まれた民主党政権だったが、結果は悲惨な状況だった。その反動で「もう民主党政権の二の舞いはごめんだ」と思っている国民は多い。

いくらお面を付け替えたところで、希望の党のバラバラ感は否めず、政策がどれほど磨き上げられたものかもおぼつかない。本当に国民の期待を受け止めて、政策を実行できる力があるとは到底思えない。

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