e敬老の日 人生経験生かせる社会こそ

  • 2017.09.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年9月18日(月)付



東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故で、今なお全町避難が続く福島県大熊町。避難指示解除のメドが依然として見えないこの「無人の町」で、いつか故郷に戻れることを信じて町民の留守を守るお年寄りたちがいる。

その名も「じじい部隊」。交代で現地に駐在し、草刈りや防犯パトロールなどに汗を流す。「若い者と違って俺たちは町を知り尽くしてる。年の功だよ」。誇らしげに語る姿がまぶしく、頼もしい。

じじい部隊に限らず、東北の被災地には、その豊かな人生経験を生かして復興の前線に立つ高齢者が少なくない。

妻と息子夫婦と孫娘を一度に失いながら、「逝った家族の分まで」と消防団活動に汗し続け、今は仮設住宅の役員を務める岩手県釜石市の鈴木堅一さん(74)。宮城県名取市の高橋善夫さん(74)も家族全員に先立たれながら、仮設住宅の自治会長として多忙な日々を送る。語り部活動や地域行事の運営に携わるお年寄りもそこかしこにいる。

復興途上にある被災地にとって、こうした元気なお年寄りの存在は「地域の財産」だ。人生経験に裏打ちされた知恵や言葉に人々は多くを学び、お年寄り自身も社会に貢献する喜びを自覚して自らの心身の健康維持の糧としている。「老い」は社会に厚みをもたらしこそすれ、決して暗いイメージで語るべきものでないことを気付かせてくれる。

総務省によれば、わが国の65歳以上の高齢者人口は15日現在、推計3514万人(総人口に占める割合は27.7%)で過去最高。半世紀前には620万人弱(同6.3%)だったことを思えば、高齢化がいかに急速に進んできたかが分かる。

この現実をどう見るか。

介護などの社会保障費が増すばかりというマイナス志向の考えに終始していては、この超高齢社会を乗り越えることができないことだけは確かだろう。じじい部隊などの事例に学び、高齢者の意欲や能力を生かすプラス志向の発想こそが求められる。

きょうは敬老の日。どうしたら老いに積極的な価値を見いだし、その力を存分に生かせる社会を築けるか。お年寄りに感謝しつつ、家庭や地域で話し合う日としたい。

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