e コラム「北斗七星」

  • 2017.09.06
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年9月6日(水)付



iPS細胞を応用した再生医療で、また画期的な成果だ。京都大学iPS細胞研究所(所長=山中伸弥教授)の研究グループは8月31日、人のiPS細胞から作った神経細胞をパーキンソン病のサルの脳に移植し症状の改善を確認したと発表した◆パーキンソン病は、脳の神経伝達物質ドーパミンを出す神経細胞が減り運動障害を起こす難病。国内の患者数は約15万人といわれる◆今回、人に近い霊長類で、最長2年間、腫瘍が形成されず、治療法の有効性と安全性が確認できたことから、研究グループは2018年度中にも人での臨床試験を開始したい考えだ◆「先生、私の体で実験してください」。広島で全国パーキンソン病友の会支部長を長年務められた水野慶三さんは11年、山中教授と懇談した際、そう申し出た。「臨床試験まで10年かかります」と言う山中教授に、水野さんは「そんなに待てませんよ」とハッパをかけたという。いつも「山中さんは希望の光」と話していた水野さんは、世界初のヒトiPS細胞作製から10年の今年、72歳で逝かれた◆「まだ誰も救っていない」。ノーベル賞受賞時に山中教授が語った自戒の言葉が研究を加速させる。パーキンソン病患者に限らず、多くの人がiPS再生医療の進展を心待ちにしている。研究者の一層の奮闘を願ってやまない。(中)

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