e子ども、若者の自殺を防ごう

  • 2017.09.01
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年9月1日(金)付



15~39歳の死因第1位



夏休み明けに多い子ども、若者の自殺―。日本では15~39歳の死因の第1位が自殺で、人口10万人当たりの「自殺死亡率」は先進国で最も高い。政府が7月に閣議決定した自殺総合対策大綱では、この現状を「非常事態」と指摘。新たな重点施策に「子ども・若者の対策」を掲げた。若年者の自殺予防に力を入れる東京都荒川区と宮崎市を取材した。


個々に合わせ相談・支援


東京・荒川区


「少しでも心配なことがあったら、気軽に電話してね」。8月24日夜、通行人が行き交うJR日暮里駅(東京都荒川区)前で女子高校生に優しく話しかける女性がいた。これは、荒川区がNPO法人「BONDプロジェクト」と共同で取り組む若年世代の自殺予防事業の一コマ。彼女は同NPOのスタッフだ。

区内の自殺者数は2011年の53人から、16年には27人に減少している。しかし、若年世代の自殺者数は横ばいが続く。このため、若年世代への予防事業に14年度から力を入れている。事業は日暮里駅前にある相談室でNPOのスタッフ約10人が面談のほか、電話、メールでの相談を実施。毎週火、木、日曜日の午後2時~8時まで相談室を開き、同日の午後4時~7時まで電話相談を受け付けている。

7~9月は、相談日を週3日から週4日(9月は土曜日も実施)に拡充。夏休み前後の中高生や学生などへの支援を強化している。スタッフは街頭パトロールにも回り、夜間に出歩く若者に声を掛け、自殺予防につなげている。

相談の中には家庭内暴力や精神疾患に関する内容もあり、病院などへの同行支援も行う。相談件数は毎年増加しており、16年度は1505件(電話=1256件、面談=249件)に上った。

予防事業で自殺を踏みとどまったケースもある。例えば、区内で1人暮らしの20代女性は精神的な不安から自殺願望があり、市販薬の過剰摂取が見られた。女性は友人の勧めで区の相談室を訪問し、仕事の悩みなどを打ち明けた。その後、相談室から依存症の専門病院を紹介され、受診に結び付いた。

区は現在、医療機関やNPO、社会福祉士らとの連絡会を月1回程度行っている。区こころの健康推進係の与儀恵子係長は「メールなどを入り口に若い人の相談が増え、自殺防止の効果が出ている。今後も多職種の連携を強化し、個々の状況に合わせた支援を継続していく」と語っている。(荒川区若年世代のこころの居場所相談室 070-6648-8318)


教職員、SOSのサイン学ぶ


宮崎市


宮崎市は7月31日から8月28日まで、学校での自殺予防対策を強化するため、教職員対象の学習会を市立中学校全25校で実施した。昨年、市内の中学生3人が相次いで自殺した問題を受け、夏休み明けに生徒が発するSOSに対する感度を高めることが目的だ。

8月25日、生目南中学校で行われた学習会には、同校の教職員13人が参加。県内で自殺予防に取り組む市民活動団体「ヘルプラインいのち」の寺原國子代表(産業カウンセラー)が講師を務め、自殺のサインへの気付き方や、適切な声の掛け方などを紹介した。

学習会では、小中学生の自殺総数は全国で年間約300人に上る実態に触れ、家庭環境や持病など、自殺の要因が多岐に及ぶことを説明。寺原代表は「自殺直前のサインは『ご飯が食べられない』、『すぐに涙ぐみ、独り言を言う』などに隠れている」と指摘した。

また、寺原代表は「生徒の話を聞く時は、決して否定せず、心配していることを伝えることが重要。子どもからは必ず"助けて"という意思表示がある。そこに目を向けてほしい」と強調。その上で、自殺の可能性が高いと判断した場合には速やかに専門家につなげることを求めていた。

参加者は「生徒の小さな変化を見逃さず、本音を引き出すような関わり方を心掛けたい」と語っていた。


公明、対策大綱など強力に推進


自殺総合対策大綱は、今後政府が推進する対策の指針となるもので、5年に1度見直される。今回の大綱では2026年までの目標に、15年の自殺死亡率から30%以上減少させることを明記。目標達成へ、自殺者数1万6000人以下をめざす。重点施策は前回の9項目から12項目に拡充。新たに「地域レベルの実践的な支援強化」や、学校でのSOSの出し方に関する教育の推進などが盛り込まれた。公明党は、大綱の基本理念を定めた改正自殺対策基本法の成立(16年4月施行)を強力に推進し、若い世代の自殺対策の重要性を、強く主張していた。


悩み抱え込まないで


24時間子どもダイヤル

0120-0- 78310 ( なやみいおう )

きょうから多くの地域で新学期が始まる。また、10日から16日までは自殺予防週間。子どもや保護者が夜間、休日でも電話できる文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」などを活用し、夏休み明けの悩みを抱え込まず、気軽に相談してほしい。

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