e米国の財政問題  経済の混乱に警戒を怠るな

  • 2017.08.29
  • 情勢/経済

公明新聞:2017年8月29日(火)付



日本経済への影響を最小限に抑えなければならない。

「政府機関を閉鎖しても、メキシコ国境との壁は建設する」とのトランプ米大統領の発言が、世界を揺るがす火種になりつつある。

メキシコからの不法移民の流入を阻止するための壁建設の費用として16億ドル(約1740億円)を、10月から始まる新年度の予算案(歳出法案)に盛り込むようトランプ大統領が米議会に求めた。

野党・民主党は米国の倫理観と相いれないと反発。与党・共和党からも疑問の声が相次ぎ、政府と議会の対立で9月初旬から始まる予算審議に入れない恐れが出てきた。

世界最大の経済大国が、国家予算なしで新年度を迎えるのは非常事態だ。予算が組めないとなれば、行政の業務が止まる「政府閉鎖」にまで進む可能性がある。

パスポートの発給停止など、米国民の日常生活が犠牲になるだけではない。グローバル企業が集う米国の証券取引市場の機能が停止し、企業の資金調達が滞るようなら、世界経済への影響は避けられまい。

2013年にも医療保険制度改革法の財源問題から政府閉鎖が起き、米株式市場は急落した。その影響が当時の東京市場にも及んだことを忘れてはならない。米国の政府閉鎖が日本の景気回復に水を差さないよう政府は十分に警戒すべきである。

もう一つ懸念されるのは、米国債による借入額の上限を引き上げる法律案を、10月初めに成立させる必要があるが、そのめどが立っていないことだ。

米国では、政府が国債を発行して民間から借金できる限度額を法律で定めている。借入額は既に上限に達しており、限度額を引き上げなければ、米政府は新たな借り入れも、国債保有者への利払いもできない。最悪の場合、借入金が返せない債務不履行になる恐れもある。米国債を保有する日本の金融機関にとっても深刻な事態である。

米政府と議会双方には、事態打開へ歩み寄る努力を求めたい。日本政府は、米国経済に混乱が生じたとしても、その影響を最小限に抑えられるよう備えに万全を期すべきである。

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