eバリアフリー基本構想  自治体の作成促す支援が必要

  • 2017.08.28
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年8月25日(金)付



「駅舎内はバリアフリー化されたが、駅から公共施設を結ぶ道路には多くの段差が残っている」「歩道の点字ブロックが途中で切れ、めざす建物内に行くことができない」

こうした課題は、バリアフリーの街づくりを進める上で多くの自治体が共有しているのではないか。

解決の一手となるのが、2006年施行のバリアフリー法に基づき、市区町村が作成できると定められた「バリアフリー基本構想」だ。

駅周辺をはじめ、高齢者や障がい者らが利用する公共施設などの集積地域を、市区町村が重点整備地区に指定し、歩道の段差解消や建物内のエレベーター設置、公園や信号機の整備などバリアフリー化を一体的に進めていく。基本構想を作成すると国からの補助金が受けられる。

市区町村に作成義務はないが、高齢化が加速する中で、移動しやすい環境の実現が求められている。バリアフリー化を点から線へ、そして面へと広げていくことは時代の要請であり、基本構想の意義は大きい。

だが、国土交通省によると、基本構想を作成したのは全1741市区町村のうち、17年3月末時点で294市区町村と2割に満たない。

基本構想が広がらない主な要因は、市区町村の人材不足と財政難だ。作成を民間業者に委託すると、1件当たり数百万円かかる場合もあり、小規模自治体ほど負担は重い。

そこで国交省は、バリアフリー法の改正を検討している。重点整備地区の面積や対象施設数といった要件の緩和などにより、市区町村の労力を軽減する方向だ。複数の自治体にまたがる構想には、都道府県が積極的に関わることも想定している。市区町村の実情を踏まえた見直しは当然といえよう。

地域の住民やNPOなどが基本構想について市区町村に提案できる仕組みが、現行制度にあることも見逃せない。

提案の受付体制を整備している自治体は179市町村と数は少ないが、住民自らバリアフリーの街づくりに参画できることが重要だ。自治体のマンパワー不足を補う効果も期待できよう。国や自治体には提案制度の周知・広報に努めてほしい。

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