e新専門医制度  患者の期待に応える内実に

  • 2017.08.22
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年8月22日(火)付



内科や外科、小児科などの「専門医」を育成・認定する新たな制度が、来年4月にスタートする。医療の質の向上により、「専門医」に対する国民の信頼を高める契機としなければならない。

現在、多くの医師が「専門医」という肩書を使っているが、各学会が独自の基準で認定してきたものだ。その数は100を超え、一つの病名に複数の診療科名が存在しているケースもある。患者にとって分かりにくく、認定基準も学会によって異なるため、専門医の水準にばらつきを生む点が指摘されてきた。

新制度では、専門医の認定を第三者機関の日本専門医機構が行う。医師国家試験に合格し2年間の初期研修を終えた医師が、医療現場でさらに3年程度の研修を受け、機構が実施する試験に合格することで認定される。

医療現場での研修内容は各科の学会が策定するが、機構の審査が必要となる。専門医のレベルアップへ、研修から試験まで関わる機構の役割は極めて大きいといえよう。

機構はまた、専門医の種類を内科や外科など19の基本領域にまとめた。患者にとっては、耳慣れた科目名の方が分かりやすいのは当然だろう。

「総合診療専門医」の新設も新制度の特徴の一つだ。

総合診療専門医は、内科や外科など複数の領域にまたがり、病院で診察するだけでなく在宅医療や介護など幅広く担当する。住み慣れた自宅や地域で暮らしながら医療や介護サービスを受ける「地域包括ケアシステム」では重要な役割を担う。地域医療を重視した試みは期待できよう。

課題も指摘しておきたい。例えば、新制度による研修は大都市に多い大学病院などで行われるため、専門医をめざす医師が都市部に集中し、地方が医師不足に陥るのではとの懸念があるという。

機構は既に、▽大都市圏の研修定員に上限を設ける▽研修施設を地域の中核病院にも広げる―などを決めた。地域医療に従事しながら専門医をめざす医師が少なくない点にも目を向ける必要がある。

高齢化に伴い国民の医療への関心は高い。まして専門医となれば患者の信頼は格別だ。この点を肝に銘じ、新制度のスタートに臨んでほしい。

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