e高めよう 地域の防災力

  • 2017.08.21
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年8月20日(日)付



近年、水害や地震などの自然災害が相次いでいます。こうした中、公明党の推進により、地域の防災力を高める動きが前進しています。先進的な自治体の取り組みなどとともに、石井啓一国土交通相(公明党)のコメントを紹介します。


水害、土砂災害対策


台風5号でタイムライン発動 三重県


8月4日朝、台風5号の進路を注視していた三重県防災企画・地域支援課の職員は、気象庁発表の予報円に県域が入ったことを確認。午前9時、「タイムライン」を発動しました。

直ちに、ツイッターによる県民への注意喚起や、地元気象台と連携した情報収集などが行われ、正午すぎには知事や各部局長らによる緊急会議を開催。台風に関する専門家の見解や、予定行事への対応などについて情報を共有しました。

タイムラインは、災害前から災害後にかけて、防災関係者が取るべき行動を時系列にまとめたもの。同県は試行版を6月から運用しています。今回の運用について、同課の杉﨑誠課長補佐は「行動項目に従って、漏れなく早めの対応を関係機関に促すことができた」と手応えを感じています。

国土交通省は、2012年に米国東海岸を襲ったハリケーンでタイムラインの効果が実証されたことを機に、国内に導入しました。15年5月には、埼玉県と東京都を流れる荒川の下流域(北区、足立区、板橋区)で全国初の本格的なタイムラインを始動。17年5月から、対象エリアを16市区にまで広げた拡大試行版が運用されています。同省は現在、国が管理する全国109水系の河川で簡易版の試行を進めています。

一方、6月からは、洪水や土砂災害の恐れがある地域の高齢者や障がい者、入院患者らが利用する施設に対し、避難計画の策定や訓練を義務付けた「改正水防法」が施行されています。


地震、津波への備え


町挙げて避難訓練を実施 高知・黒潮町

南海トラフ巨大地震が発生すると、全国で最も高い約34メートルの津波が襲うと予測される高知県黒潮町。大西勝也町長は「災害および防災の本質をしっかり理解し、人命確保のための政策を全力で展開する。犠牲者をゼロにしたい」と力を込めます。

同町は12年から対策強化に動き出し、従来の避難タワーの高さや、タワーの数が不十分だと分かると、より高く頑丈なものを計6基造りました。また、一人一人の避難方法を把握する戸別避難カルテを、浸水想定地域の全世帯で作成しました。

町を挙げた総合防災避難訓練は、10年以上前から毎年実施。16年には住民の理解を得た上で、初めて夜間に行い、全町民の3分の1に当たる約4000人が参加しました。

同年11月には、津波防災について討議する「世界津波の日 高校生サミットin黒潮」が同町で開かれ、日本人115人を含む世界30カ国の高校生361人が参加しました。次代を担う防災リーダーとしての活躍が期待されています。

一方、首都直下地震などに備える東京都では、木造住宅密集地域(木密地域)の延焼を防ぐ対策を進めています。重点的に改善する「不燃化特区」を指定し、老朽建築物の除却費用などを助成しています。

国は14年度から毎年、大規模災害に備えた行動計画「国土強靱化アクションプラン」を策定。自治体の計画づくりも支援し、43都道府県で策定を終えました。今後、市区町村に焦点を当てた対策を進める方針です。


老朽化インフラ整備


長寿化へ AIやドローンを活用

災害に強い街づくりを進めるには、道路や橋などの老朽化対策が不可欠です。

国交省は16年11月に企業や自治体、大学などが参加する「インフラメンテナンス国民会議」を発足させました。これにより、例えば企業間提携で、道路の「でこぼこ」や「ひび割れ」を解析する技術と、路面下の「空洞」調査技術を統合し、一定区間ごとの道路状況の"見える化"を実現。この技術は今後、災害時の迅速な被害の把握に役立つと期待されています。

また、同省は17年3月、国や自治体のインフラ整備に関する指針案をまとめました。高所や下水管など立ち入りが困難な場所の点検を可能にする人工知能(AI)やドローン(小型無人機)を活用し、道路や橋の長寿化を推進します。


「現場力」生かし、国民の命を守る
国土交通相 石井啓一氏

台風や集中豪雨によって各地で発生している水害や、昨年の熊本地震など、近年、地域に深刻な影響を与える大きな災害が頻発しています。

これらを踏まえ、今後は災害に対する知識や心構えを、社会全体で共有しながら災害に備えるという「防災意識社会」への転換が必要であり、その上で、ハード、ソフト両面の対策を進めなければならないと考えています。

こうした観点から、水害については「施設では守りきれない大洪水は必ず発生する」との考えに立ち、減災のための施策に取り組みます。そして、「逃げ遅れゼロ」「社会経済被害の最小化」の実現に向け、全国の河川を対象に、関係機関が時系列に沿って、事前に防災計画を決めておくタイムラインの試行などを進めているところです。

また、切迫する南海トラフ巨大地震や首都直下地震に対しては、巨大津波や火災、建物の倒壊など、想定される具体的な被害に合わせ、避難路・避難場所の整備、密集市街地対策、ゼロメートル地帯の堤防の耐震化など、実効性のある対策を推進します。

今後とも国交省の持つ「現場力」を最大限活用し、災害から国民の命と暮らしを守るため、総力を挙げて防災・減災対策に取り組んでまいります。

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