eコラム「北斗七星」

  • 2017.08.14
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年8月12日(土)付



旅先で子どもが急病になり、ずいぶん心細い思いをしたことがある。これが、言葉も十分に通じない海外ならば、ことさらだろう。日本を訪れる外国人客は増加を続け、今や年間2500万人を超える勢い。医療サービス提供について、初の実態調査の結果が公表された◆全国の救急病院などに2015年実績をたずねたところ、8割で外来、6割で入院の外国人患者を受け入れていた。そのうち6割強では、日本語でのコミュニケーションが難しい患者を受け入れた経験がある。その半数以上に英語で対応し、仕方なく日本語で対応したところも3割弱ある◆医療通訳者を配置している医療機関は15%に過ぎない。他は、医師・看護師や事務職員がなんとか対応しているのが実態で、6割が医療通訳の導入についての公的な支援を求めている◆こうした状況を地方自治体の8割以上が把握していない。医療機関から依頼を受ける医療通訳サービス事業者からは「専門職として認識されていない」ため「職業としての医療通訳が成り立たず、人材の確保が難しい」との嘆きの声がもれる◆医療通訳には、専門性が求められる。症状と医師の診断を正確に伝えなければならない。安心の医療を外国人に提供できる体制づくりのために、医療通訳の育成と支援充実が急がれる。(繁)

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ