eコラム「北斗七星」

  • 2017.07.24
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年7月24日(月)付



「雨、蕭々」「銀の雨」「小夜時雨」......。江戸幕府の天領、大分県日田市を舞台にした葉室麟氏の小説『霖雨』は、章の題に雨が並ぶ。為政者の横暴に耐え、清冽な生き方を貫いた広瀬淡窓、久兵衛兄弟の物語である◆淡窓が開いた私塾「咸宜園」は、多くの逸材を輩出した。久兵衛が手掛けた新田開発や灌漑は、市の社会基盤となっている。「心は高く、身は低く」との家訓とともに、広瀬家には、久兵衛が開削の陣頭指揮で着けた蓑が伝わるという◆末裔、広瀬勝貞大分県知事との対談で葉室氏は、作品で雨の描写にこだわった理由を明かす。「日田の美しい自然を背景にすると、苦しさの果てに美しい光景が見られるのではないかという気がして」(『霖雨』PHP文芸文庫)◆雨は苦難の代名詞だが、雨そのものの苦難である。流木と泥が暮らしを押し流した。福岡、大分両県を襲った九州北部豪雨。今も安否が知れぬ人がいる。汗だくで泥を運び出す作業がつらくないはずがない。東北や熊本から駆け付けたボランティアの励ましが、どれほどの力になることか◆苦難にある人々に手を差し伸べることを「霖雨蒼生」という。「霖雨」は長雨、「蒼生」は人民を指す。「美しい光景」を目にすることができる日まで、公明党は被災地を全力で支えていく決意だ。(也)

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