eコラム「北斗七星」

  • 2017.07.18
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年7月17日(月)付



英国に留学経験のある夏目漱石が絶賛した同国の作家にジェイン・オースティンがいる。今秋発行予定の英ポンド紙幣の肖像画にも採用される国民的作家である。漱石が最大級に評価したのは、彼女が手掛ける人間描写の卓越ぶりだった◆オースティンの代表作に「高慢と偏見」がある。今月、NHKEテレ「100分de名著」で取り上げている。タイトルが気に掛かり、手に取ってみた◆女主人公エリザベスと大富豪のダーシー。身分の差を乗り越え、すれ違う二人は最終的にハッピーエンドとなる。偏見から遠ざけていたエリザベスと、高慢だったダーシーを結び付けたものは何か◆答えは、計略も打算もないエリザベスが投げ掛けた一言。階級的にはジェントルマンかもしれないが、人間としては敬われるべき人ではないとの直言が、ダーシーに自身の高慢さを気付かせた。この出来事をきっかけに、ダーシーは自身を省みたところが小説のミソである◆作品が世に出たのは1811年。2世紀ほど前ではあるが、人間の心理は時を隔てても変わらない。今も多くの人々から支持される理由がストンとのみ込めた◆この人は本気なのか、それとも上っ面でその場をやり過ごそうとしているのか。このところ、お高い人ほど心に響かない発言が多い気がしてならない。(広)

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