e日欧EPA 自由貿易体制再構築の契機に

  • 2017.07.10
  • 情勢/国際

公明新聞:2017年7月10日(月)付



日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意した。

発効すれば、人口にして世界の1割弱、経済規模は3割を占める巨大経済圏が生まれることになる。

英国のEU離脱や米国の環太平洋経済連携協定(TPP)離脱など保護主義的な動きが広がる中、日欧首脳が自由貿易体制堅持の意志を行動で示した意義は大きい。直後に開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議に強いメッセージを送ることにもなった。率直に評価、歓迎したい。

日欧EPAは、非関税の貿易品目が最終的に全体の95%を超える見込みで、自由化水準は極めて高い。

例えば、欧州から日本への輸出では、ワインの関税を即時撤廃するほか、パスタやチョコレートも税率を下げ、最終的に無税にする。焦点だった欧州産チーズについても、低関税の輸入枠を設け、段階的に税率ゼロにしていく。

他方、日本からの輸出では、緑茶や日本酒などの関税は即時撤廃。最優先課題としてきた乗用車関税も、協定発効から7年をかけて撤廃する。

知的財産保護や電子商取引、企業統治、投資など関税以外の新分野のルールでも合意した。グローバル時代に適合した「21世紀型協定」として、今後の多国間通商協定のモデルとなろう。

自覚すべきは、その分、世界経済の発展に果たす日欧の責任が一段と重くなったことだ。危機に瀕する世界の自由貿易体制の再構築に向けた"二頭立てのリーダーシップ"を期待したい。

特に日本は、米国を除く11カ国でのTPPの早期発効や、日中韓印など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の進展に指導力を発揮すべきだ。

日米経済対話でも、「反保護主義」「自由貿易体制擁護」という日本の立場をさらに鮮明にしていく必要がある。

日欧EPAは年内の最終合意を経て、2019年中に発効する予定だ。総じて消費者は利益を受けることになるが、EUとの競争を強いられる畜産農家などからは不安の声も聞かれる。

政府は生産者への目配りを怠らず、必要な支援を積極的に行っていくことが重要だ。

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